ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

おすすめ

スモールワールズ

『スモールワールズ』/一穂ミチ 近くのどこかに落ちている誰かの物語 きっとありふれている小さな物語 でもその世界はどこまでも深く果てしない 小さな鐘の余韻がずっと心の中で鳴り響く 暗闇の中でうずくまり、鐘の音が消えてゆくのを いつまでも見ていた…

クララとお日さま

『クララとお日さま』/カズオ・イシグロ 病弱な少女と人工知能を持ったアンドロイドの物語 店で身請けを待つ知的なアンドロイド ある日、病弱な少女と運命的な出会いをする 少女の家に引き取られたアンドロイドは 少女を愛し献身的に全てを捧げる 純粋無垢…

羊と鋼の森

『羊と鋼の森』/宮下奈都 偶然にピアノの調律を見て心を奪われた少年 それが運命だったかのように調律師を目指す 初項を開いた途端に森の中に立たされる さまざまな森の音を聞きながら森の中を彷徨い やがて光の射す場所へと導かれる 気がつくと全てを包み…

イノセントデイズ

『イノセントデイズ』/早見和真 自分を唯一必要としてくれた男に裏切られた女 男に執着した女は男の妻と子供を放火で殺害する 関係者が女や事件について語り、明らかになる事実 女の意思、事件の真相が炙り出されてゆく 終盤の結末に向かうまでの息苦しさが…

風よ あらしよ

『風よ あらしよ』/村山由佳 青鞜の編集者を経てアナキストの妻となる伊藤野枝の生涯を描いた大河小説 人間が生きる意味とは何か この物語は心の底から湧き上がる 魂の叫びを持ってそれを知らしめる 自分が信じるものを決して手放さない 時代は変われど、そ…

しき

『しき』/町屋良平 高校生たちのありふれた日常を大人目線で描写した物語 描かれる情景は細筋の一本がピクリと動く様子をも逃さぬ鋭さ 一致した共感は数知れない青春への郷愁をもたらす その追憶の時間はリアルすぎて笑ってしまうほど 文体のリズムが心と同…

博士の愛した数式

『博士の愛した数式』/小川洋子 八十分しか記憶が持たない数学博士の家政婦として働く母子の物語 質素な離れの家の中に広がる壮大な数字の世界 神が創造したその世界は清廉で美しく純粋な空間であり 人間という存在を映す鏡でもあると知った 震えるほどに愛…

ブラフマンの埋葬

『ブラフマンの埋葬』/小川洋子 怪我をした森の動物を保護した芸術家の宿泊施設の管理人の物語 森の野生動物と一緒に暮らす青年 出会った瞬間に二人は惹かれ合い、時を重ねるごとに心を通わせてゆく 独特の言い回しで淡々と状況を並べていくような文体 行間…

かか

『かか』/宇佐見りん 混沌の言語海から釣り上げられる奇妙で可愛いい言葉たち 母に対する抑えきれない愛憎を軸に描かれた娘の混乱と葛藤 行き先の不確かさと読了後に得られる符号 この物語は女という生き物の象徴であり 女という生き物の解剖書なのだと思い…

とんび

『とんび』/重松清 広島に住む頑固親父と家族の人生を描いた人情物語 不器用に生きる頑固親父は子育ても不器用 そんな親父の背中を見ながらまっすぐに成長する子供 素直になれないお親父の愚行にツッコミを入れながら 人を思いやる心に涙する 親子人情物語…

首里の馬

『首里の馬』/高山羽根子 沖縄に住む女の子が出会いから学び生きてゆく姿を描いた物語 人との関わり合いが苦手な女の子が 人生で出会うざまな人や出来事に向き合う そこから何かを感じ意思を持ち強くなっていく姿は 全ての瞬間に彼女の純粋な心が映し出され…

ジゼルの叫び

『ジゼルの叫び』/雛倉さりえ バレエの世界に生きる少女たちの心の葛藤を描いた物語 人間の体の動作に歪を強い完成を求めるバレエの世界 そこに生きる未完成な少女たちの心と体の矛盾 静謐で冷たい水の中を覗いているような文体の中 水をかき分け躍り出る心…

破局

『破局』/遠野遥 卒業を控えたラグビー部の大学生が二人の女と別れを迎えるまでの物語 読了直後、 それぞれの世界を持った噛み合わない若者たちの群像劇だと思いました 気になったところを読み返すと 人間の表裏、可笑しみを描いた落語の世界が降りてきた …

ライオンのおやつ

『ライオンのおやつ』/小川糸 瀬戸内の島のホスピスで最後を迎える病気の女性の物語 葛藤の末にたどり着く命の終焉の時間 描かれているその世界は静謐であり光に満ちた世界に見えました 死を目前にして人は些細な日常に生きることの意味を知る 自分が死ぬと…

夜市

『夜市』/恒川光太郎 すべてのものが売られている異世界の夜市で起きた出来事の物語 余計なものが排除された筆致で展開される物語 シンプルな文章が故に情景が心に刺さりました 読み進めても展開が意外な方向性を持ち やがてクライマックスを迎える 夜市の…

ぷくぷく

『ぷくぷく』/森沢明夫 部屋にある金魚鉢の中から見守った女の子の恋の物語 最初から最後までなにか雑音のない静かな場所で 情景を見ているような感覚 実際そういう物語なのだけど その静けさの中でぷくりと弾ける感情の泡が心を揺らす 揺れる心の余韻をい…

夜は短し歩けよ乙女

『夜は短し歩けよ乙女』/森見登美彦 天真爛漫な女の子と彼女に恋をする大学生の物語 文中に仕掛けられた無数の引用とお茶目な言葉たち 読み進めながら次はどこに飛ばされるのだろう そんなドキドキを感じながら物語を楽しみました キラキラとした街を散歩し…

三体II

『三体II』/劉慈欣 地球外文明からの侵略の危機を描いた物語 人類が生き抜くために描かれたいくつかの戦略 どれが、なにが正解なのか? 物語は科学と人間心理と放射状に伸びる希望と絶望の中を突き進む スピード感があり引き込まれる展開 男の子なので宇宙…

重力ピエロ

『重力ピエロ』/伊坂幸太郎 母が強姦されて生まれた弟と兄の二人の復讐の物語 アイロニカルな訳アリ兄弟そして父 さらりとした語り口で社会の不条理を私刑にかける いい。好き。 今まであまり意識してこなかった著者が描く世界観 この作品でしっかり認識で…

のぼうの城

『のぼうの城』/和田竜 秀吉の北条攻めの際に唯一落城を免れた成田家の忍城の物語 のぼう様とは何者だったのか? 味方や敵の三成はもちろん読者の中にハテナ?を残して物語は幕を閉じる 一つ確かなのはこの戦いが信義を重んじる者たちが戦った戦だったとい…

ぼくは朝日

『ぼくは朝日』/朝倉かすみ 天真爛漫な小学生の日常と家族を描いた物語 まんまとしてやられました しょっぱなから僕の心は思うがままに操られ笑いと涙が漏れ出す始末 最後は分かるだろみたいな終わり方 全く本の感想になっていませんが 一言言わせていただ…

少年と犬

『少年と犬』/馳星周 飼い主と死別した犬が仲良しの子供を探して旅をする物語 賢く勇気のある主人公 まあ犬なんだけど、こんな犬と出会ってしまったら 目がハートになってしまう気持ちに共感 物を言わない主人公に高倉健の姿を重ねながら 昔飼っていた犬な…

村上海賊の娘

『村上海賊の娘』/和田竜 戦国時代に男勝りに生きる瀬戸内の村上海賊の娘の物語 破天荒で真っ直ぐな女海賊 敵同士でもお互いに対する尊敬の念を忘れない海賊たち 読んでいてとても気持ちがいい 裏表のない生き方をする人たちの眩しい世界を見ました でも本…

ジェノサイド

『ジェノサイド』/高野和明 知能レベルの高い新人類の出現によって変化を始める世界の物語 新人類の出現とその存在に脅威を感じる旧人類との攻防 タイムリミットに向けて敵と味方が入り混じりながら進んでゆく脱出劇 ハリウッド映画を見ているような感覚で…

昨夜のカレー、明日のパン

『昨夜のカレー、明日のパン』/木皿泉 夫が死んだ嫁と義父の二人暮らしの家の周りの人間物語 嫁と義父、二人の同居暮らし 大切なものを無くした人たちが想い出を抱えながらゆるく繋がって生きてゆく 家族後の新しい世界のようなものの存在を感じました 家族…

舟を編む

『舟を編む』/三浦しをん 国語辞典を製作する編集部員たちの辞書出版に向けた奮闘の物語 辞書編纂という仕事を学ぶ一冊 日常生活で出会う言葉を気の遠くなるような時間をかけて コツコツ収集する地味な作業 その情熱がこの国の言葉の文化を総括する 何かを…

晴れ、時々くらげを呼ぶ

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』/鯨井あめ 世の中の理不尽にくらげを降らせることで抗議しようとする高校生たちの物語 正直このままありきたりの青春小説で終わってしまうのかと 逆にドキドキしていたのだけど 本を読み終えたとき 僕は確かにくらげが降る空の下…

流浪の月

『流浪の月』/凪良ゆう 本人たちの意思で一緒に暮らした青年と幼女が誘拐事件の加害者と被害者として生きてゆく物語 禁断の愛 社会正義との対立 二人だけが知るお互いの本質 読み進めるうちに透明感のある心を持つ二人を応援したくなる 二人を放っておいて…

旅のラゴス

『旅のラゴス』/筒井康隆 異星の知識を得るために旅をし人間という世界を見た男の物語 旅とは日常生活における束の間の異郷体験 人生を旅に例えることもあるけど、この本にはその人生の全てをかけて旅をするというロマンがある イベント的には相当な波乱を…

異邦人

『異邦人』/カミュ フランスに住む世間擦れした青年が殺人を犯し裁判を経て死刑になる物語 思考回路が異なる人とは永遠に噛み合わない世界がよく描かれている 噛み合わない世界は今も昔も変わらない 女子高生とおっさん、政治と民意、立候補者と有権者・・…