ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

地球星人

『地球星人』/村田沙耶香 自分を異星人だと信じる女が仲間とこの世界を強烈に風刺する話 物語は人間社会にはびこる社会通念に 支配された空気を辛辣に風刺し抵抗を試みる ホラーじみた展開もあり その破滅終末感にむしろ喜劇を感じる 彼らが本当に異星人で…

空想クラブ

『空想クラブ』/逸木裕 一人の女の子の死をきっかけに再会し絆を取り戻す小学校の同級生たちの物語 かつて空想の世界を共有した仲間たち 仲間の死をきっかけに再会し 当時の絆を取り戻してゆく ファンタジーと謎解きとミステリーが ふんわりとした世界観の…

パン屋再襲撃

『パン屋再襲撃』/村上春樹 アイロニカルな視線で描かれる不思議で奇妙な物語の短編集 皮肉屋さんのねじれた視点で描かれた不思議な世界 突拍子もない比喩に遭遇するたびに 奇妙で少し憂鬱な物語の世界に いつの間にか引き込まれてしまう魔法 Amazonで読む…

心淋し川

『心淋し川』/西条奈加 江戸の場末の長屋に住む人々の喜々悲哀の人生物語集 貧しくそれぞれが苦悩を抱えながらも たくましく生きてゆく そこに見えたのはたとえ人生が苦悩に満ちていても 隣人の人情がもたらす小さな心の豊かさでした 【第164回直木賞受賞】…

暗闇にレンズ

『暗闇にレンズ』/高山羽根子 何代にもわたって映像制作に携わった女性たちの物語 人の心を揺り動かす映像コンテンツ 時に映像は人の心を破壊する兵器となる この物語は戦争から監視社会、そして未来まで 映像の世界がもたらす脅威を指摘する 現実世界から…

夢幻

『夢幻』/上田秀人 家康と信長の二人の視点で語られる戦国の世の物語 物語は概ね史実に沿って進展し 大仰な創作的味付けはあまりない どちらかというと小説というより歴史書的な趣ですが やはり信長を待つ運命の瞬間が読みどころでした Amazonで読む楽天で…

2020年の恋人たち

『2020年の恋人たち』/島本理生 事故で母を亡くし母の店を引き継ぎながら恋に翻弄される女の子の物語 自立した女に群がるハリボテのような男たち 愛人という肩書きで死んだ母を見てきた女は 恋愛に懐疑的で近づく男たちを切り捨てる 恋愛という病に免疫を持…

漁港の肉子ちゃん

『漁港の肉子ちゃん』/西加奈子 漁港の町に住む母娘の慎ましくも明るい二人暮らしの生活の物語 訳ありの母はどこまでも明るく人を幸せにする そんな母を見て育った娘はクールを装う どこを切り取っても優しさと可笑しみに溢れ ほんわりと柔らかな温かみに包…

いま、会いにゆきます

『いま、会いにゆきます』/市川拓司 死別した妻と再開する父子の物語 病気を抱えた父と息子の二人家族 荒れた生活の中でも仲の良い二人にほっこりする 父子にとって亡くなった妻はかけがえのない存在だった 物語は家族の想い出が語られ秘密が明かされる 唐…

約束された移動

『約束された移動』/小川洋子 仕事や日常の中で出会う特別な体験が語られた短編集 心を指先でちょんと揺らすようなエピソードが語られる どの話もあーとため息が出そうな引き込まれる設定で 言葉に無駄がなく、誰にでもある記憶の引き出しが 次々に開けられ…

革命前夜

『革命前夜』/須賀しのぶ 東ベルリンに音楽留学した日本人留学生が見たベルリンの壁崩壊の物語 専門的知識をちりばめてリアルに描かれる音楽の世界 東ベルリンに音楽留学した学生の音楽性への苦悩 いつしか物語は革命へと転調する 監視と密告の人間の闇の世…