成瀬は天下を取りにいく
いかついタイトル。迷いのない目をした表紙の少女。その印象だけでこの本を手に取る人も多いだろうと思う。自分もその一人だ。主人公成瀬は滋賀に住む女子中学生。同級生の友達の視点でその生き様が描かれる。生き様とは穏やかではないが、この本を読み進めればその言葉もなるほどと納得できるだろう。
成瀬は常に自分の興味、思考に従順である。西武デパートの閉店を惜しむローカルテレビの映像に映り込むためにプロ野球のユニフォームを着て毎日現場に足を運ぶ。誰のためでもない。ただ自分がそうしたいから。友達を誘いコンビを組んでM-1にエントリーする。もちろん、自分がそうしたいから。成瀬は一見強調性に欠けるようにも見えるが、それは決して他人を下に見ているわけではなく、自分の興味に素直なだけ。気がつけば、成瀬が次に何をするのか目が離せない。
空気が読めない人。今の世の中にはそんな人を蔑む空気感がある。この本の主人公成瀬もそういった人のカテゴリーに入るのかも知れない。しかし、自分の心に嘘をつかず真っ直ぐに前を向く姿に、思わず成瀬を応援したくなるだろう。表面的に人を見るのではなく、その人の本質を知ることが大切。愛すべき少女がそれを教えてくれる。
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