ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

破局

『破局』/遠野遥 卒業を控えたラグビー部の大学生が二人の女と別れを迎えるまでの物語 読了直後、 それぞれの世界を持った噛み合わない若者たちの群像劇だと思いました 気になったところを読み返すと 人間の表裏、可笑しみを描いた落語の世界が降りてきた …

ライオンのおやつ

『ライオンのおやつ』/小川糸 瀬戸内の島のホスピスで最後を迎える病気の女性の物語 葛藤の末にたどり着く命の終焉の時間 描かれているその世界は静謐であり光に満ちた世界に見えました 死を目前にして人は些細な日常に生きることの意味を知る 自分が死ぬと…

あなたの愛人の名前は

『あなたの愛人の名前は』/島本理生 ちょっと訳ありな大人たちの恋模様を描いた短編集 心の隙間にそっと差し込むような恋の予感 誰かを裏切ってまでもそこに手を伸ばしてしまう背徳感 恋という魔法に翻弄される人の心の在り処を 見せつけられました Amazon…

夜市

『夜市』/恒川光太郎 すべてのものが売られている異世界の夜市で起きた出来事の物語 余計なものが排除された筆致で展開される物語 シンプルな文章が故に情景が心に刺さりました 読み進めても展開が意外な方向性を持ち やがてクライマックスを迎える 夜市の…

ぷくぷく

『ぷくぷく』/森沢明夫 部屋にある金魚鉢の中から見守った女の子の恋の物語 最初から最後までなにか雑音のない静かな場所で 情景を見ているような感覚 実際そういう物語なのだけど その静けさの中でぷくりと弾ける感情の泡が心を揺らす 揺れる心の余韻をい…

阪急電車

『阪急電車』/有川浩 阪急電車内ですれ違う人々の偶然の繋がりから生まれるほのぼのとした物語 電車が走る沿線の町とそこに住む人々 路線や町ごとに異なるカラフルな情景を感じながら読みました 偶然に行き合う人々の出会い頭の交流が楽しそう 関西では見知…

犬のかたちをしているもの

『犬のかたちをしているもの』/高瀬隼子 妊娠が難しい体となった女が浮気した男の相手の子供をもらい受けることに葛藤する物語 女としての尊厳を損なう病気の葛藤 男に対して飼っていた犬ほど深い愛情を持てない女 冷静に生きようとしながらも感情に動かさ…

夜は短し歩けよ乙女

『夜は短し歩けよ乙女』/森見登美彦 天真爛漫な女の子と彼女に恋をする大学生の物語 文中に仕掛けられた無数の引用とお茶目な言葉たち 読み進めながら次はどこに飛ばされるのだろう そんなドキドキを感じながら物語を楽しみました キラキラとした街を散歩し…

赤い砂を蹴る

『赤い砂を蹴る』/石原燃 家族を失った二人の女がブラジルへの旅の中で人生を振り返る物語 家族の誰かを失うという出来事 その相手が好きでも嫌いでも 残された人の心には様々な感情が落とされる そこに答えはない、でも生きていく そんなメッセージを受け…

植物図鑑

『植物図鑑』/有川浩 道端で拾った家事が得意な男に恋をする女の物語 おーなんてファンタジーと読み進めていたら 「すてきなファンタジーではない」と終盤に否定されたので やられた〜と思いながら、いやこれ完全にファンタジーだよねと粘る僕 路傍の人と草…

三体II

『三体II』/劉慈欣 地球外文明からの侵略の危機を描いた物語 人類が生き抜くために描かれたいくつかの戦略 どれが、なにが正解なのか? 物語は科学と人間心理と放射状に伸びる希望と絶望の中を突き進む スピード感があり引き込まれる展開 男の子なので宇宙…

氷菓

『氷菓』/米澤穂信 学校で起きる謎を解き明かす高校生の仲間の物語 高校生たちがキラキラしたお互いの個性をぶつけ合いながら 学校の謎を解いてゆく 来るぞ、きっと来る、その瞬間が だけど読み終わっても心電図に異常が見られなくて あーもう無理なんだな…

じんかん

『じんかん』/今村翔吾 戦国の武将、松永久秀の生涯を描いた大河小説 久秀が人を信じようとする一方で人に翻弄される姿は今昔に通じる 人間世界の混沌を見た気がしました 自分の信念のままに生きようとする真っ直ぐな久秀の姿に 心を打たれるも戦国世なのに…

重力ピエロ

『重力ピエロ』/伊坂幸太郎 母が強姦されて生まれた弟と兄の二人の復讐の物語 アイロニカルな訳アリ兄弟そして父 さらりとした語り口で社会の不条理を私刑にかける いい。好き。 今まであまり意識してこなかった著者が描く世界観 この作品でしっかり認識で…

たそがれどきに見つけたもの

『たそがれどきに見つけたもの』/朝倉かすみ 人生の秋の季節を生きる人々の日常、非日常を集めた短編集 人間を生きることへの葛藤 所詮他人である人との繋がり 歳を重ねたからこそ見える景色 まあいろいろあってもみんなとりあえず生きてるんだよ そんな言…

スプートニクの恋人

『スプートニクの恋人』/村上春樹 エキセントリックな三人の恋の三角関係 初項を開いた途端に村上ワールドの襲撃を受けた 久しぶりに感じるこの感覚 内容に関しての感想は差し控えたい なぜなら考え始めると終わりがないから 考えずに感じる それが村上作品…

オブリヴィオン

『オブリヴィオン』/遠田潤子 妻を殺し刑務所を出所した男が妻の真実を知ってゆく物語 妻を過って殺し服役を終えた男 自分や妻の家族に隠された真実が明らかになってゆく 思いやりの嘘が招く崩壊の世界 Amazonで読む楽天で読む

稚児桜

『稚児桜』/澤田瞳子 能の名曲から書き起こした人間の様々な心根を描いた短編集 恨み、妬み、復讐など人間が引き起こす醜さが描かれているが その文体は穏やかでむしろその余韻に引き込まれる気がしました 今昔、世界の景色は変わっても人の根っこは変わら…

のぼうの城

『のぼうの城』/和田竜 秀吉の北条攻めの際に唯一落城を免れた成田家の忍城の物語 のぼう様とは何者だったのか? 味方や敵の三成はもちろん読者の中にハテナ?を残して物語は幕を閉じる 一つ確かなのはこの戦いが信義を重んじる者たちが戦った戦だったとい…

雲を紡ぐ

『雲を紡ぐ』/伊吹有喜 いじめで引きこもり祖父の元で織物の世界に魅せられ自分の生きる道を見つけた少女の物語 いじめで高校をドロップアウトする女の子 祖父の元で織物の世界と出会い自分の生きる道を模索してゆく 家族という普遍ユニットの不安定さがよ…

ぼくは朝日

『ぼくは朝日』/朝倉かすみ 天真爛漫な小学生の日常と家族を描いた物語 まんまとしてやられました しょっぱなから僕の心は思うがままに操られ笑いと涙が漏れ出す始末 最後は分かるだろみたいな終わり方 全く本の感想になっていませんが 一言言わせていただ…

本日は、お日柄もよく

『本日は、お日柄もよく』/ 原田マハ OLがスピーチライターに転身し政権交代に寄与する物語 軽快なテンポで進む文体とストーリー スピーチと政治の世界が描かれる スピーチはもちろん人が放つ言葉には 世界を動かす力がある、世界を変える力がある 言葉が持…

鹿の王

『鹿の王』/上橋菜穂子 王国同士が争う世界に生きる人々の物語 王国同士そして土着の民の間で繰り広げられる争い 厳しい大自然の中に生きる民衆 物語を読みながら雄大な世界が目の前に広がっているような感覚を覚えた 物語全体を包む優しさのようなものに少…

少年と犬

『少年と犬』/馳星周 飼い主と死別した犬が仲良しの子供を探して旅をする物語 賢く勇気のある主人公 まあ犬なんだけど、こんな犬と出会ってしまったら 目がハートになってしまう気持ちに共感 物を言わない主人公に高倉健の姿を重ねながら 昔飼っていた犬な…

放蕩記

『放蕩記』/村山由佳 母ではなく女として生きる母親に対する屈折を患った女の物語 母親の生き方にわだかまりを持つ娘 よく描かれるテーマの一つです 男の自分でも親の生き方に反発を感じることがあるけど 女性同士にはより深い葛藤と感情の波がある気配を感…

村上海賊の娘

『村上海賊の娘』/和田竜 戦国時代に男勝りに生きる瀬戸内の村上海賊の娘の物語 破天荒で真っ直ぐな女海賊 敵同士でもお互いに対する尊敬の念を忘れない海賊たち 読んでいてとても気持ちがいい 裏表のない生き方をする人たちの眩しい世界を見ました でも本…

雪国

『雪国』/川端康成 温泉地に通う男と芸者の悲哀の物語 女の元に通う男、そんな男を待つ女 人の色恋のカラクリは今も昔も変わらない 日常生活では交わらない二人には 相手のどんな姿が見えているのだろうか? そんなことを考えた 一昔前の風情と情景を感じな…

ジェノサイド

『ジェノサイド』/高野和明 知能レベルの高い新人類の出現によって変化を始める世界の物語 新人類の出現とその存在に脅威を感じる旧人類との攻防 タイムリミットに向けて敵と味方が入り混じりながら進んでゆく脱出劇 ハリウッド映画を見ているような感覚で…

銀花の蔵

『銀花の蔵』/遠田潤子 血の繋がらない父の実家の醤油屋を継ぐ娘の人生を描いた物語 小さな行き違い 些細なことが人間関係に影響を与える世界を見たような気がします 現実の世界も然り 人は全てをさらけ出した時にようやくその人を理解できるのかもしれませ…

昨夜のカレー、明日のパン

『昨夜のカレー、明日のパン』/木皿泉 夫が死んだ嫁と義父の二人暮らしの家の周りの人間物語 嫁と義父、二人の同居暮らし 大切なものを無くした人たちが想い出を抱えながらゆるく繋がって生きてゆく 家族後の新しい世界のようなものの存在を感じました 家族…