ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

永遠の0

『永遠の0』/百田尚樹 生きて帰ることを信じていた一人の零戦パイロットの物語 戦争という惨禍はその信念に容赦なく襲いかかる 語られるエピソードが心を揺さぶる 戦争を読む意味は史実に対する白黒の色つけではなく 純粋に学ぶことなのだと思う Amazonで…

ワカタケル

『ワカタケル』/池澤夏樹 第21代雄略天皇(ワカタケル)の半生を描いた大河小説 過度な脚色はなく記録に基ずいた史実を淡々とたどる しかし神話の引用や獣が神の遣いになるなどの場面があり 目に見えぬ何かに心を割いただろう当時の様子が伺えるのは興味…

しき

『しき』/町屋良平 高校生たちのありふれた日常を大人目線で描写した物語 描かれる情景は細筋の一本がピクリと動く様子をも逃さぬ鋭さ 一致した共感は数知れない青春への郷愁をもたらす その追憶の時間はリアルすぎて笑ってしまうほど 文体のリズムが心と同…

よその島

『よその島』/井上荒野 島に移住した老夫婦とその友人の奇妙な物語 何かかみ合わないまま物語は進み やがて秘密が明らかになってゆく なんとも言えない寂寥感が心の隙間を スッと通り抜けていった気がしました Amazonで読む楽天で読む 書籍紹介 著者紹介 po…

きらきらひかる

『きらきらひかる』/江國香織 結婚した同性愛の男と心を病む女の揺れる心情を描いた物語 全編に散りばめられた愛すべき言葉たち お互いを気使う二人の揺れる心の鼓動 タイトル通り全てがきらきらひかる 心の奥底に無数の小さな光がポッと灯る そんな気持ち…

十字架のカルテ

『十字架のカルテ』/知念実希人 高校の親友を殺された精神科女医が精神疾患を患った犯人と向き合う物語 犯罪者の嘘と精神障害に向き合う精神科医 人の観察しか判断根拠のない精神鑑定 責任能力を判定する困難が腑に落ちました エピソード毎に完結するので迷…

一人称単数

『一人称単数』/村上春樹 人生の記憶に爪痕を残すエピソードを描いた短編集 本編の中で頻繁に音楽が登場した影響からか 音符を読むように文字を拾い物語の世界を堪能しました 他では味わえない読書の楽しみ方 深く意味を考えないのはいつも通り Amazonで読…

法廷遊戯

『法廷遊戯』/五十嵐律人 父の冤罪を晴らすために仕組まれた法廷闘争の物語 大学の模擬裁判から本法廷へと続く緊迫の裁判手続きと審理 法的根拠の中で語られてゆく真理へとつながる証言のピースたち 物語は緻密に計算された細道を辿り結末へと導かれる 法律…

『類』/朝井まかて 森鴎外の末子、森類の人生を描いた大河小説 名士の子供に生まれたが故の幸、不幸がせめぎ合う 何者かになることを夢見ながら 自らの才を引き出せない自分を冷めた目で見つめている 精緻な情景描写の中で淡々と物語が語られてゆく Amazon…

隣人X

『隣人X』/パリュスあや子 惑星移民と地球人の日常を描いた物語 平場の中にひっそりと紛れ込む異質 衝撃的な出来事をこの物語はあくまで穏やかに描いていく 危機や不条理の裏で淡々と続いてゆく平凡な日常 そこには大切なものを守り生きている人がいる 確か…

推し、燃ゆ

『推し、燃ゆ』/宇佐見りん 自身の全てを捧げてアイドルを推す少女の物語 それが世界の全てであるかのように推しのアイドルに心酔する 誰もが通る道であるけれど、より深みに沈み込んだ姿は 物悲しくて痛々しくて切ない 壊れてゆく感情と日常、推しの炎上 …

たおやかに輪をえがいて

『たおやかに輪をえがいて』/窪美澄 夫の風俗通いを知った妻が自分という人間を見つめ直す物語 全てから距離を置き自分を取り戻してゆく姿に共感を覚えました 自分が大切なものは何か、守りたいものは何か そんなことを自分に問いかけながら生きていく そん…

いけない

『いけない』/道尾秀介 三つの殺人事件を舞台にした謎と秘密を描いた輪作ミステリー 巧みに隠された謎、緊迫の犯行シーン 各章末に秘密が隠された写真が提示される 読了後になるほどと思いつつ 何か見落としがあるのではと再読をそそられる一冊でした Amazo…

スキマワラシ

『スキマワラシ』/恩田陸 事故で死んだ両親と兄弟を繋ぐ不思議な現象の物語 現実では交わることのない親子を繋ぐ不思議な現象 物語は旅をするように謎の現象の核心に迫ってゆく どんな状況になっても親が失うことのない 子供への愛情が描かれていたのだと思…

博士の愛した数式

『博士の愛した数式』/小川洋子 八十分しか記憶が持たない数学博士の家政婦として働く母子の物語 質素な離れの家の中に広がる壮大な数字の世界 神が創造したその世界は清廉で美しく純粋な空間であり 人間という存在を映す鏡でもあると知った 震えるほどに愛…

うたかた姫

『うたかた姫』/原宏一 脚本で描いた天才歌姫のシンデレラストーリーが現実になってゆく 登場人物の動機のところにはハテナが多かったが 物語はテンポよく展開しエンディングまで駆け抜ける 読了後、水玉模様が気になって仕方がないのです Amazonで読む楽天…