ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

人生ドラマ

向田理髪店

『向田理髪店』/奥田英郎 田舎町の理髪店の店主と過疎の町民たちの生活を描いた物語 北海道の田舎町に暮らす人々 全ての出来事が共有される町民文化 喧嘩をしても時間が経てば元通り 濃い人付き合いは深い絆と助け合いを生む 過疎の町の滑稽さと人情が溢れ…

リボンの男

『リボンの男』/山崎ナオコーラ 主夫になり主夫としての生き方に迷う男とその家族の物語 家族を夢見るバイト暮らしの男 理解のある女と出会い主夫となる 男は家事と子育てをしながら 稼ぎのない自分にコンプレックスを抱える 社会や人生は誰かの換金不可な…

雪の練習生

『雪の練習生』/多和田葉子 三代に渡るシロクマの人生の物語 それぞれの生き方は全く異なるが 人間という生き物のエゴが時代背景とともに シロクマたちを翻弄する世界が描かれる シロクマ目線で描かれるどことなく異質な世界観 他では味わえない読書体験で…

水と礫

『水と礫』/藤原無雨 砂漠を旅した男とその家族の物語 現実と空想らしき世界を旅する男 何代にも渡る男の家族の物語が描かれる 繰り返される描写と奇妙なズレ 行き先の見えない旅は 見事にそのテーマを内包し終焉する 現代に生まれ落ちた古典を見た気がしま…

そこにはいない男たちについて

『そこにはいない男たちについて』/井上荒野 生きている夫が大嫌いな女と死んだ夫が大好きな女 正反対の状況の女の葛藤が対比で描かれる 一見交わらなさそうな二人 相手が不在のまま一方的に感情のマグマを膨らませる様子が 女という生き物の本質を見た気が…

ザリガニの鳴くところ

『ザリガニの鳴くところ』/ディーリア・オーエンズ 湿地に住み親に捨てられた孤独な少女の生涯を描いた物語 満ち引きを繰り返す海、鳥たちの羽を煽る潮風、 湿地に生きる動物たちの命の息吹 脳内で鮮明に再現される自然の情景描写に圧倒されました 展開とし…

やがて訪れる春のために

『やがて訪れる春のために』/はらだみずき 祖母と暮らした思い出の家の庭を再生しながら生きる道を見つける女性の物語 祖母の入院をきっかけに 荒れ果てた家と庭を再生していく 再生の過程で繋がる家族と同級生 庭に育つ様々な草花の色彩と匂いが文面から立…

六月の雪

『六月の雪』/乃南アサ 祖母が怪我で入院したことをきっかけに 祖母が生まれ育った台湾に思い出探しに行く孫娘 旅先で出会ったのは旅を助けれくれる人々とその人生 そして戦争に翻弄された台湾の歴史だった 台湾の文化や日本との関わりなどとても興味深く読…

風よ あらしよ

『風よ あらしよ』/村山由佳 青鞜の編集者を経てアナキストの妻となる伊藤野枝の生涯を描いた大河小説 人間が生きる意味とは何か この物語は心の底から湧き上がる 魂の叫びを持ってそれを知らしめる 自分が信じるものを決して手放さない 時代は変われど、そ…

よその島

『よその島』/井上荒野 島に移住した老夫婦とその友人の奇妙な物語 何かかみ合わないまま物語は進み やがて秘密が明らかになってゆく なんとも言えない寂寥感が心の隙間を スッと通り抜けていった気がしました Amazonで読む楽天で読む 書籍紹介 著者紹介 po…

『類』/朝井まかて 森鴎外の末子、森類の人生を描いた大河小説 名士の子供に生まれたが故の幸、不幸がせめぎ合う 何者かになることを夢見ながら 自らの才を引き出せない自分を冷めた目で見つめている 精緻な情景描写の中で淡々と物語が語られてゆく Amazon…

輪舞曲

『輪舞曲』/朝井まかて 大正時代に実在した新劇女優の半生を描いた物語 芸術、芸能界隈の混沌、女優という職業の黎明期 その苦難の時代を力強く生きてゆく女 そこには女、そして母親としての過去を持つ主人公の揺るぎない覚悟が見えました 情景と色彩描写の…

とんび

『とんび』/重松清 広島に住む頑固親父と家族の人生を描いた人情物語 不器用に生きる頑固親父は子育ても不器用 そんな親父の背中を見ながらまっすぐに成長する子供 素直になれないお親父の愚行にツッコミを入れながら 人を思いやる心に涙する 親子人情物語…

首里の馬

『首里の馬』/高山羽根子 沖縄に住む女の子が出会いから学び生きてゆく姿を描いた物語 人との関わり合いが苦手な女の子が 人生で出会うざまな人や出来事に向き合う そこから何かを感じ意思を持ち強くなっていく姿は 全ての瞬間に彼女の純粋な心が映し出され…

号泣する準備はできていた

『号泣する準備はできていた』/江國香織 さまざまな人の人生の一コマを切り取った短編集 人の人生というものは思ったより個性的で偶然でできている 読み進めるうちにそんなことを思いました ぼんやりと生きていたら面白い何かを見逃してしまうわよ そんなこ…

ライオンのおやつ

『ライオンのおやつ』/小川糸 瀬戸内の島のホスピスで最後を迎える病気の女性の物語 葛藤の末にたどり着く命の終焉の時間 描かれているその世界は静謐であり光に満ちた世界に見えました 死を目前にして人は些細な日常に生きることの意味を知る 自分が死ぬと…

雲を紡ぐ

『雲を紡ぐ』/伊吹有喜 いじめで引きこもり祖父の元で織物の世界に魅せられ自分の生きる道を見つけた少女の物語 いじめで高校をドロップアウトする女の子 祖父の元で織物の世界と出会い自分の生きる道を模索してゆく 家族という普遍ユニットの不安定さがよ…

銀花の蔵

『銀花の蔵』/遠田潤子 血の繋がらない父の実家の醤油屋を継ぐ娘の人生を描いた物語 小さな行き違い 些細なことが人間関係に影響を与える世界を見たような気がします 現実の世界も然り 人は全てをさらけ出した時にようやくその人を理解できるのかもしれませ…

昨夜のカレー、明日のパン

『昨夜のカレー、明日のパン』/木皿泉 夫が死んだ嫁と義父の二人暮らしの家の周りの人間物語 嫁と義父、二人の同居暮らし 大切なものを無くした人たちが想い出を抱えながらゆるく繋がって生きてゆく 家族後の新しい世界のようなものの存在を感じました 家族…

旅のラゴス

『旅のラゴス』/筒井康隆 異星の知識を得るために旅をし人間という世界を見た男の物語 旅とは日常生活における束の間の異郷体験 人生を旅に例えることもあるけど、この本にはその人生の全てをかけて旅をするというロマンがある イベント的には相当な波乱を…