ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

八月の銀の雪

『八月の銀の雪』/伊与原新 ふとした出会いで知る未知の世界と物語を描いた短編集 それぞれの物語にはふとした出会いがもたらす アイテムとそれにまつわるストーリーが埋め込まれている 好奇心をくすぐり心を揺らす物語は 爽やかな風と共に心を吹き抜け温か…

水と礫

『水と礫』/藤原無雨 砂漠を旅した男とその家族の物語 現実と空想らしき世界を旅する男 何代にも渡る男の家族の物語が描かれる 繰り返される描写と奇妙なズレ 行き先の見えない旅は 見事にそのテーマを内包し終焉する 現代に生まれ落ちた古典を見た気がしま…

ボダ子

『ボダ子』/赤松利市 女にだらしない男が心を病んだ娘と元妻のために金を稼ごうと奔走する物語 再婚を繰り返す女にだらしない男 心を病んだ娘と元妻と東北に移り住み 一儲けしようと奔走する 悪さをするくせに妻子を切り捨てられない 男のちぐはぐさが強烈…

見えない星に耳を澄ませて

『見えない星に耳を澄ませて』/香月夕花 心に傷を抱えながら葛藤し音楽療法士を目指す音大生 音やリズムが複雑な人の心を表現する様子が描かれる 物語全体に奇妙な不協和音のようなものが鳴り続け 現実から浮遊したままストーリーは展開する 読み終わっても…

旅する練習

『旅する練習』/乗代雄介 それぞれが打ち込むものの練習を兼ねた叔父と姪の旅 自然や歴史と触れ合いながら旅情を満たしてゆく 旅という非日常がもたらす出会いに 心を洗われる思いでした 唐突に持ち出された結末の意味は今も分からないまま Amazonで読む楽…

雪のなまえ

『雪のなまえ』/村山由佳 いじめで不登校になった女の子が田舎に移住し心を回復してゆく物語 いじめに遭い不登校になった女の子 心に残った傷は深く外の世界に怯えながら生きてゆく 心を痛めてしまった人は もう元には戻れないのだと思う ただ、家族や友達…

風花

『風花』/川上弘美 夫の不倫を目の前にしてなお、決断をできず悩みつずける女の物語 ある日、夫の不倫を唐突に知らされる女 女は現実を突きつけられても別れの決断から逃げ惑う どこかつかみどころのない夫 次第に冷めた目で事態を見つめる妻 物語は静かに…

オルタネート

『オルタネート』/加藤シゲアキ 高校生専用のマッチングアプリで繋がる 高校生たちの等身大の日常が描かれている 未完成な心を揺らす悩みや不安、期待や希望 いろいろな感情がないまぜになった物語が ラストに向かって疾走してゆく 迸るような青春が輝いて…

そこにはいない男たちについて

『そこにはいない男たちについて』/井上荒野 生きている夫が大嫌いな女と死んだ夫が大好きな女 正反対の状況の女の葛藤が対比で描かれる 一見交わらなさそうな二人 相手が不在のまま一方的に感情のマグマを膨らませる様子が 女という生き物の本質を見た気が…

52ヘルツのクジラたち

『52ヘルツのクジラたち』/町田そのこ 虐待を受けてきた女性が自分と同じ境遇の男の子と出会う 同じ境遇で生きてきた二人に言葉は不要だった 虐待、トランスジェンダー、自死、浮気暴力男、ストレス障害 次々に繰り出される心の闇の世界に 心が凍りついたま…