ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

仕事ドラマ

ボタニカ

『ボタニカ』/朝井まかて 植物研究家、牧野富太郎の評伝小説 少年は郷里の草花と親しげに話をする 成長し興味が高じた男は家の財を食い尽くし 植物研究に没頭する 困窮の家は妻まかせ、学位に見向きもせず 一研究家として草花を採取する日々 己の道を貫く頑…

塞王の楯

『塞王の楯』/今村翔吾 戦国の世に家族を亡くし故郷を追われた少年 石積みの師に拾われ職人となる 城の守りの要となる石垣積み 技術を極め、戦の中でその本質を知る 戦とは何か、人とは何か 全てが果てて人はようやくそれに気が付く 【第166回直木賞受賞作…

黄金旅程

『黄金旅程』/馳星周 ジョッキーを目指した男 夢破れるも競走馬の世界に居座り続ける 男がいる競走馬の産地に住む人々 彼らは人生を夢を競走馬に注ぎ込む 光り輝く馬体、飛ぶように走る馬姿 みなの夢を載せた一頭の馬が馬場を駆け抜ける その勇姿に心が湧き…

倒産続きの彼女

『倒産続きの彼女』/新川帆立 社内不正を告発された女 履歴書には倒産した会社名が並んでいた 告発の真相を探る女弁護士 調査の過程で発生する事件 妨害に翻弄されながら真相に近づいてゆく 弁護士である前に人である 本音が透ける様が小気味いい Amazonで…

7.5グラムの奇跡

『7.5グラムの奇跡』/砥上裕將 眼科医院で働く不器用な新人視能訓練士 患者とふれ合う中で学び成長してゆく 原因が目で見えない視界障害 優しく患者を見守る心の目がヒントを与える フカフカの羽毛のような優しさに包まれ 夢見ごごちのまま終項を迎えた Ama…

ガラスの海を渡る舟

『ガラスの海を渡る舟』/寺地はるな すれ違う家族の中で不仲となった兄妹 祖父のガラス工房を二人が引き継ぐ 仕事を通して人を知り 自らの心を見つめ直す 無くしたものを取り戻すには ただ受け入れるだけでいい そんな簡単なことが難しいのだなと思う Amazo…

アフター・サイレンス

『アフター・サイレンス』/本多孝好 事件被害者の心のケアをする臨床心理士の女 対象に深く感情移入してしまう性格 自らが加害者家族である心の葛藤 犯罪という狂気が人の心を翻弄する 職業人としてはたぶん失格なのだけど 人間の素が漏れ出す描写にリアリ…

赤の呪縛

『赤の呪縛』/堂場瞬一 銀座のクラブで発生した焼身自殺事件 事件を追う刑事は政治家である父の影を踏む 偶然か必然が事件を担当することになった 刑事は自身の過去と向き合うことになる 一旦の結末を見ないまま終項を迎えたのが残念 Amazonで読む楽天で読…

クローズアップ

『クローズアップ』/今野敏 暴力団の抗争がらみの未解決殺人事件を追う刑事たち 何者かによる情報操作の真相を追うテレビ報道記者 両者の追跡はいつしか一本の線に繋がってゆく 結末に向けて一気に動き出すストーリー 息を呑む展開に活字を追うスピードが止…

羊と鋼の森

『羊と鋼の森』/宮下奈都 偶然にピアノの調律を見て心を奪われた少年 それが運命だったかのように調律師を目指す 初項を開いた途端に森の中に立たされる さまざまな森の音を聞きながら森の中を彷徨い やがて光の射す場所へと導かれる 気がつくと全てを包み…

麦本三歩の好きなもの 第二集

『麦本三歩の好きなもの 第二集』/住野よる 極度の内弁慶である図書館勤務の女子 その傍若無人ぶりは第二集と相成っても健在 俗欲に素直に絡め取られる姿はいっそ清々しい 自己改革や恋の予感もありながら たくましく生きる姿を微笑ましく読みました Amazon…

盤上に君はもういない

『盤上に君はもういない』/綾崎隼 将棋界初の女性棋士を目指した女たち 人生の全てを投げ打ち将棋に命を捧げる姿が描かれる たとえ消化試合だとしても全力で相手の勝利を阻止する そんな礼節を持った勝負師たちの世界に胸が熱くなる 強さの裏に隠された愛は…

透明な夜の香り

『透明な夜の香り』/千早茜 家族の不幸に傷を抱える女 常人離れした嗅覚を持つ調香師 過去を持つ二人の偶然の出会いは運命を引き寄せる ハーブが香る爽やかな世界の中で物語は展開し 限りなく透明に近いラブストーリーが残された Amazonで読む楽天で読む 書…

白い久遠

『白い久遠』/浅野里沙子 質屋で働く女の子が質入れ品にまつわる人間模様を紐解く物語 物に宿る人間の想いは時に深く果てしない 物語は物に取り憑く人々の想いを紐解いてゆく 物とは人の想い出を記憶する記録装置であり 記憶を引き出すスイッチでもあると思…

十字架のカルテ

『十字架のカルテ』/知念実希人 高校の親友を殺された精神科女医が精神疾患を患った犯人と向き合う物語 犯罪者の嘘と精神障害に向き合う精神科医 人の観察しか判断根拠のない精神鑑定 責任能力を判定する困難が腑に落ちました エピソード毎に完結するので迷…

うたかた姫

『うたかた姫』/原宏一 脚本で描いた天才歌姫のシンデレラストーリーが現実になってゆく 登場人物の動機のところにはハテナが多かったが 物語はテンポよく展開しエンディングまで駆け抜ける 読了後、水玉模様が気になって仕方がないのです Amazonで読む楽天…

輪舞曲

『輪舞曲』/朝井まかて 大正時代に実在した新劇女優の半生を描いた物語 芸術、芸能界隈の混沌、女優という職業の黎明期 その苦難の時代を力強く生きてゆく女 そこには女、そして母親としての過去を持つ主人公の揺るぎない覚悟が見えました 情景と色彩描写の…

背中の蜘蛛

『背中の蜘蛛』/誉田哲也 サイバー空間を監視する警視庁の秘匿部署が行う違法捜査を描いた物語 デジタル社会で様変わりする捜査手法 警察によるサイバー空間の監視が描かれています セキュリティの隙を突く新手の犯罪に追いつけない社会 法的根拠のない捜査…

本日は、お日柄もよく

『本日は、お日柄もよく』/ 原田マハ OLがスピーチライターに転身し政権交代に寄与する物語 軽快なテンポで進む文体とストーリー スピーチと政治の世界が描かれる スピーチはもちろん人が放つ言葉には 世界を動かす力がある、世界を変える力がある 言葉が持…

舟を編む

『舟を編む』/三浦しをん 国語辞典を製作する編集部員たちの辞書出版に向けた奮闘の物語 辞書編纂という仕事を学ぶ一冊 日常生活で出会う言葉を気の遠くなるような時間をかけて コツコツ収集する地味な作業 その情熱がこの国の言葉の文化を総括する 何かを…