ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ハーモニー

『ハーモニー』/伊藤計劃 完全健康体を手に入れた未来の管理社会 最後の砦として残された精神の自由 心を病んだ一人の少女が世界を変えようとする 人の幸せとは何か 優しさや慈愛の世界は人間の楽園なのか 平和のために人間を捨てられるのか 物語は究極の選…

新しい星

『新しい星』/彩瀬まる 合気道部の大学時代の仲間 それぞれが抱える問題が再会を呼ぶ 時とともに背負うものが増える人生の中で 変わらない懐かしい顔が癒しとなる 一瞬で時を超える旧友との再会 そんな懐かしい時間を思い出しました Amazonで読む楽天で読む…

TUGUMI

『TUGUMI』/吉本ばなな 従姉妹と一緒に住んだ故郷の町 病弱な従姉妹は傍若無人な人だった 海辺の町の夏の匂いが色濃く 人の心模様が波のように押し寄せる 激しくも静かでなにか切ない 心に直接触れられるような文章に 浸る時間が愛おしい Amazonで読む楽天…

赤と青とエスキース

『赤と青とエスキース』/青山美智子 下絵のまま仕上がった一枚の絵画 その絵が人を繋ぎ物語を紡ぎ出す 分断されたいくつかの物語が描き重ねられ 一つの絵として仕上がってゆく 創り出されたその世界は とても優しく温かい場所でした Amazonで読む楽天で読む…

おはようおかえり

『おはようおかえり』/近藤史恵 奇妙なことを言う妹に違和を感じる姉 そして確信に変わる 妹には曽祖母が乗り移っていた 曽祖母の心残りを手伝う中で 家族のこと、時代の変化を考える 残されたのは自分への肯定だった 静かに流れる時間が心地よい読書でした…

ミニシアターの六人

『ミニシアターの六人』/小野寺史宣 追悼上映が行われたミニシアター ある上映回にいた六人だけの観客 各人がそれぞれの事情を抱えそこにいる 銀座の夜の街 緩やかに繋がる人々 偶然が織りなしてゆく夜の世界が 静かに心に降り積もる Amazonで読む楽天で読…

ほんのこども

『ほんのこども』/町屋良平 父親が母親を殺した同級生 彼が残した文章を元に小説を書く自分 小説とその構想記が併記され 自分と彼の境界が溶け合い混濁する 分断独歩する文章が意識の迷走を呼び 埋め込まれた鋭利な言葉にハッとする 読了には相当な胆力を要…

らんたん

『らんたん』/柚木麻子 日本の女子教育に力を注いだ河井道の評伝小説 女性の人権軽視が色濃く残る戦前戦後期 女性に教育の場を作ろうと奮戦する女たち 新しい女性像を求めて行動を起こす女たち 明治から昭和初期に活動した女たちの姿が描かれる 女性たちの…

黙約のメス

『黙約のメス』/本城雅人 信念に従い臓器移植を精力的にこなす医師 ビジネス的成功を目指す病院経営 私怨で医師を恨む官吏とジャーナリスト 皆がそれぞれの立場で己の主張を声高に叫ぶ 誰のための何のための医療なのか そんな疑問が投げかけられる Amazonで…

失われた岬

『失われた岬』/篠田節子 世を捨て忽然と姿を消す人々 彼らが向かうのは北国の隔絶した岬 なぜそこに行くのか、そこに何があるのか 大自然に秘匿された岬の秘密 真実を解く旅は過去へ遡る 分かるけど分かりづらい読後感でした Amazonで読む楽天で読む 書籍…

闇祓

『闇祓』/辻村深月 言葉や行動で人を操り支配する 闇の存在が人を傷つけ死に至らしめる 人の弱みにつけ込むずる賢さ 有無を言わさぬ正論と威圧 人はいとも簡単に闇の前に屈服する 物語の中では悪役が存在するが それは人間そのものであるように見えた Amazo…

ミカエルの鼓動

『ミカエルの鼓動』/柚木裕子 手術支援ロボットを操り名を成す医師 自他ともに認める病院の盟主 ドイツ帰りの医師の登場で風向きが変わる 病院内を支配する権力の匂い 金を巡る不正と隠蔽 一人の医師の心の葛藤が描かれる Amazonで読む楽天で読む 書籍紹介 …

ぼくは勉強ができない

『ぼくは勉強ができない』/山田詠美 野生的な感覚を剥き出しに生きる男の子 彼がいる教室には奇妙な風が吹く 大人の都合や団体生活の暗黙の了解 何かがおかしいのにおかしいと言えない空気 そんなむず痒い学校システムの不都合が あっけらかんと語られる 悩…

倒産続きの彼女

『倒産続きの彼女』/新川帆立 社内不正を告発された女 履歴書には倒産した会社名が並んでいた 告発の真相を探る女弁護士 調査の過程で発生する事件 妨害に翻弄されながら真相に近づいてゆく 弁護士である前に人である 本音が透ける様が小気味いい Amazonで…

砂に埋もれる犬

『砂に埋もれる犬』/桐野夏生 育児放棄され飢えに苦しむ兄弟 兄弟は身勝手な母親を見限り関係は崩壊する 過酷な生存サバイバル 心に埋め込まれた不信と嫌悪 みなが自分の気持ちを押し付け合い 噛み合わない心理描写が描かれる それが現実ならとても悲しい A…

とわの庭

『とわの庭』/小川糸 母と二人暮らしの盲目の少女 少女にとって母親が生きるの全てだった 永遠という幻想の喪失 襲いかかる絶望と死の足音 限りなく透明で純粋無垢な心を差し出され 跪き祈るしかできない自分がそこにいた Amazonで読む 書籍紹介 powered by…

N

『N』/道尾秀介 海沿いの街に住む人々を描いた連作短編 人それぞれが抱える問題 意図せず出会ってしまう事故や病気 心の揺れが起こす行動 その結果が生み出すミステリー ほら、あなたの側にも奇譚がありますよ そう囁かれたような気がする Amazonで読む楽天…