ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

クローズアップ

『クローズアップ』/今野敏 暴力団の抗争がらみの未解決殺人事件を追う刑事たち 何者かによる情報操作の真相を追うテレビ報道記者 両者の追跡はいつしか一本の線に繋がってゆく 結末に向けて一気に動き出すストーリー 息を呑む展開に活字を追うスピードが止…

少女葬

『少女葬』/櫛木理宇 家出少女たちが向き合う社会の闇と運命の物語 弱者を吸い寄せる社会の闇 自由を求めた家出少女たちが向き合う厳しい現実 音もなくそっと忍び寄る分岐点 彼女たちはそれぞれの運命に向かって突き進む 信じたくはない、人間のおぞましい…

陽だまりの彼女

『陽だまりの彼女』/越谷オサム 気まぐれで風変わりだった中学の同級生 取引先にいた彼女と偶然に再会し交際が始まる 甘々な蜜月が続く中に置かれる 隠された秘密がありますよという伏線 最後の最後に明かされた秘密にですよねと納得しました Amazonで読む…

センセイの鞄

『センセイの鞄』/川上弘美 高校時代の先生と飲み屋で再会した女 記憶に薄かったはずの先生に好意を寄せてゆく かつての先生と生徒という関係の間にある隔壁 大人となった女は歳の差をも余裕で受容する 静かなる文体の中に見え隠れする熱い心情 女性という…

9月9日9時9分

『9月9日9時9分』/一木けい 夫に暴力を振われ、離別し心を病む姉 その夫の弟に恋をした妹の葛藤が描かれる どうしてこんなことになったのか、誰が悪いのか 物語は答えのない回廊をひたすら彷徨い続ける 諦めずに信じた先に見えた微かな光 その光が真実…

ことり

『ことり』/小川洋子 小鳥と通じる言葉を持った兄と その言葉を唯一理解する弟 小鳥を愛する兄弟の慈愛に満ちた日常が描かれる 雑音のない透明な空気の中で紡がれる言葉が 心を覆い尽くしじわじわと浸透してゆく やがて満たされた心から温かいものが溢れ出…

大人は泣かないと思っていた

『大人は泣かないと思っていた』/寺地はるな 片田舎に住む人々の家族と人生が描かれた連作短編集 家族が抱える問題、世代間ギャップ、田舎特有の世間の狭さ 誰もが不可避な生きづらさを抱えながらも 側にいる誰かに支えられ救われる姿に心が洗われる リアル…

アヒルと鴨のコインロッカー

『アヒルと鴨のコインロッカー』/伊坂幸太郎 引っ越した早々、本屋強盗に加担させられた青年 その犯罪の裏に横たわる悲しい過去の事件 現在と過去を行き来する物語 散りばめられる伏線 なかなか明かされない真相にけん引され ラストまで息をつめて読み切り…

累々

『累々』/松井玲奈 複数の男と同時進行で付き合う女の子 行動の心理が明示されることはなく 過去の片思いだけが象徴として横たわる 掴みどころがなく揺れ動く心情 少女と大人の狭間の不安定な女性像が 行間からこんこんと湧いてくる Amazonで読む楽天で読む…

あなたがはいというから

『あなたがはいというから』/谷川直子 大学の同窓生と再会した男女が過去の恋に火を付ける物語 還暦を迎え大学時代の恋人と再会した二人 それぞれが抱える家族の問題が二人の距離を縮めてゆく 歳をとっても恋の記憶は褪せることがない 人間は幾つになっても…

汚れた手をそこで拭かない

『汚れた手をそこで拭かない』/芦沢央 人を恐怖に陥れる人間の奇行を描いた短編集 迫り来る恐怖と心理的な圧迫感 どの物語も予測不能な結末が待ち受ける 人間の嫌な側面を絞り出すような恐怖体験 次はあなたの番かもしれない Amazonで読む楽天で読む 書籍紹…

タダイマトビラ

『タダイマトビラ』/村田沙耶香 育児放棄の母と家に帰らない父 壊れた家族の中で心の逃避を試みる少女 歪な世界の中で少女は自分の心を癒す 自分だけの慰撫の方法を生み出す 崩壊してゆく少女の精神が この世界の全てが幻想であることを証明する Amazonで読…

さよならドビュッシー

『さよならドビュッシー』/中山七里 火災で祖父と従姉妹を失い 自らも大火傷を負いながらピアニストを目指す少女 音楽エンターテインメントとミステリー どちらも妥協なくガッツリ描かれる世界観 二つの別の物語を同時に読んだような読了感でした Amazonで…

羊と鋼の森

『羊と鋼の森』/宮下奈都 偶然にピアノの調律を見て心を奪われた少年 それが運命だったかのように調律師を目指す 初項を開いた途端に森の中に立たされる さまざまな森の音を聞きながら森の中を彷徨い やがて光の射す場所へと導かれる 気がつくと全てを包み…

愛されなくても別に

『愛されなくても別に』/武田綾乃 親に愛されなかった二人の女の子 お互いの優しさに触れた二人は友達になる ギリギリのところで生きてきた彼女たちには 安易に信じられる救いなどないのだと思う それでも、思いがけず見つけた小さな優しさが 彼女たちが生…