ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2023-01-01から1年間の記事一覧

我が手の太陽

この物語の主人公は職人。勤める会社のエースを自他ともに認められる溶接の熟練工だ。プラントなどの現場に出向き、普段、人が目にすることがないような巨大な鋼管を繋ぎ合わせる。 手元で弾ける灼熱の光、高熱下で溶けオレンジ色に光る鋼の池。溶接による接…

みつばの泉ちゃん

泉ちゃんは小学3年生。近所のお姉さんと並んでアイスを食べながら、お姉さんに小学生の頃に好きな子がいたかと聞く。泉ちゃんには二人いて、二人から嫌われていると言う。泉ちゃんは物おじしない、ちょっとおしゃまな女の子。泉ちゃんは人を和ませる。 泉ち…

成瀬は天下を取りにいく

いかついタイトル。迷いのない目をした表紙の少女。その印象だけでこの本を手に取る人も多いだろうと思う。自分もその一人だ。主人公成瀬は滋賀に住む女子中学生。同級生の友達の視点でその生き様が描かれる。生き様とは穏やかではないが、この本を読み進め…

ラブカは静かに弓を持つ

主人公の青年は子供の頃にチェロを習っていた。社会人となり再び音楽教室に通いチェロを手にする。この物語の軸となっているのは現実の社会でも耳目を集めた音楽著作について。音楽教室での楽曲演奏に著作使用料を課すという問題。グレーゾーンが長い間放置…

街とその不確かな壁

村上春樹の小説世界は森だ。6年ぶりの長編小説『街とその不確かな壁』のハードカバーを開け、最初の一行を読んだ瞬間に森の中に迷い込んだ感覚を覚えた。薄暗く霧がかかったような文章の森の中をおそるおそる進んでいく。輪郭のおぼろな登場人物。謎めいた…