ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

輪舞曲

『輪舞曲』/朝井まかて 大正時代に実在した新劇女優の半生を描いた物語 芸術、芸能界隈の混沌、女優という職業の黎明期 その苦難の時代を力強く生きてゆく女 そこには女、そして母親としての過去を持つ主人公の揺るぎない覚悟が見えました 情景と色彩描写の…

ブラフマンの埋葬

『ブラフマンの埋葬』/小川洋子 怪我をした森の動物を保護した芸術家の宿泊施設の管理人の物語 森の野生動物と一緒に暮らす青年 出会った瞬間に二人は惹かれ合い、時を重ねるごとに心を通わせてゆく 独特の言い回しで淡々と状況を並べていくような文体 行間…

背中の蜘蛛

『背中の蜘蛛』/誉田哲也 サイバー空間を監視する警視庁の秘匿部署が行う違法捜査を描いた物語 デジタル社会で様変わりする捜査手法 警察によるサイバー空間の監視が描かれています セキュリティの隙を突く新手の犯罪に追いつけない社会 法的根拠のない捜査…

木曜日にはココアを

『木曜日にはココアを』/青山美智子 桜並木の見えるカフェから繋がる人々を描いた短編輪作集 ドラマチックではないけれどホッと心が温まるエピソードたち サラサラとあっという間に物語を読み終えていました スキマ時間を埋める読書にぴったりの本だと思い…

コンセント

『コンセント』/田口ランディ 兄の不可解な死の真相を追いかけるうちに世界の真実と繋がる能力を開花させた女の物語 普通の人間が感知できない人智を超えた世界 人間の意識はどこにあるのか?死後それはどこに行くのか? 世界の本質とは何か?どうすればそ…

かか

『かか』/宇佐見りん 混沌の言語海から釣り上げられる奇妙で可愛いい言葉たち 母に対する抑えきれない愛憎を軸に描かれた娘の混乱と葛藤 行き先の不確かさと読了後に得られる符号 この物語は女という生き物の象徴であり 女という生き物の解剖書なのだと思い…

アウア・エイジ

『アウア・エイジ』/岡本学 映画館のバイトで知り合った女の子の過去を追いかける物語 昔に好意を寄せた人の過去を辿ってゆく物語 確かに昔、好きだった人の今はどんなだろうと思うことはある でもなぜ?のところが符合しなくて困った ところどころに埋まっ…

とんび

『とんび』/重松清 広島に住む頑固親父と家族の人生を描いた人情物語 不器用に生きる頑固親父は子育ても不器用 そんな親父の背中を見ながらまっすぐに成長する子供 素直になれないお親父の愚行にツッコミを入れながら 人を思いやる心に涙する 親子人情物語…

純喫茶パオーン

『純喫茶パオーン』/椰月美智子 老夫婦が経営する純喫茶に入り浸る孫と仲間たちが遭遇する小謎の物語 コミカルでクセのある登場人物 プチミステリーと軽快に進んでいくストーリー 迷わずサラサラと読める一冊でした 読了後、児童文学だったのかなとふと思い…

首里の馬

『首里の馬』/高山羽根子 沖縄に住む女の子が出会いから学び生きてゆく姿を描いた物語 人との関わり合いが苦手な女の子が 人生で出会うざまな人や出来事に向き合う そこから何かを感じ意思を持ち強くなっていく姿は 全ての瞬間に彼女の純粋な心が映し出され…

愛の色いろ

『愛の色いろ』/奥田亜希子 複数愛者が住むシェアハウスの住人たちの瓦解の物語 複数愛者というテーマを掲げて始まった物語は その核心には触れずに想定外の方向に展開する 何かにのめり込む人の姿、夢から覚めた時の寄る辺なさ、仲間が瓦解してゆく儚さ そ…

雪月花黙示録

『雪月花黙示録』/恩田陸 主義の異なる分離した世界のせめぎ合いを描いた物語 真逆の方向性を進む分離した二つの世界 過去から続く世界の混迷の謎に向き合う若者たち 描かれる舞台は既知に近いが独創的な空想空間 閉塞感のある混沌の世界を楽しむ物語なのだ…

ジゼルの叫び

『ジゼルの叫び』/雛倉さりえ バレエの世界に生きる少女たちの心の葛藤を描いた物語 人間の体の動作に歪を強い完成を求めるバレエの世界 そこに生きる未完成な少女たちの心と体の矛盾 静謐で冷たい水の中を覗いているような文体の中 水をかき分け躍り出る心…

四畳半タイムマシンブルース

『四畳半タイムマシンブルース』/森見登美彦 ボロアパートに住む大学生たちが未来からやってきたタイムマシンで右往左往する物語 回顧的空間に住む個性的な登場人物たち テンポよく進むストーリー展開 どこかとんでもないところに飛ばされることを予感させ…

号泣する準備はできていた

『号泣する準備はできていた』/江國香織 さまざまな人の人生の一コマを切り取った短編集 人の人生というものは思ったより個性的で偶然でできている 読み進めるうちにそんなことを思いました ぼんやりと生きていたら面白い何かを見逃してしまうわよ そんなこ…