ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

翼の翼

『翼の翼』/朝比奈あすか 気軽に受けたつもりの実力試験 予想外の好結果に浮き立つ母子 中学受験という地獄に落ちる瞬間 我が子を特別視する親の狂気 親を喜ばせようとする子の健気 絵に描いたような受験地獄が親子を翻弄する 想定を超える切り口が見当たら…

黒牢城

『黒牢城』/米澤穂信 信長を裏切り有岡城に籠城した荒木村重 迫り来る信長の影と漂う裏切りの匂い 謎解きに仕立てられた事件が 戦国の世に揺れる武将たちの心を翻弄する 何が起きるか予測不能な乱世に 盟友のようにミステリーが寄り添う 【第166回直木賞受…

女のいない男たち

『女のいない男たち』/村上春樹 親密だった女性を失う男たちの姿を描いた短編集 出だしの一行に触れるだけで引き込まれる予感 二行目でそれは現実となる 女という生き物の不可解 男という生き物の儚さ 忘れかけていた穴の存在が 心の奥底で掘り起こされたよ…

自由研究には向かない殺人

『自由研究には向かない殺人』/ホリー・ジャクソン 5年前に起きた事件を自由研究にした少女 自殺し犯人とされた少年は彼女のヒーローだった 小さな町で絡み合う人間関係 誰もが後ろめたい何かを持つ現実 果敢に事件に迫る少女の破天荒ぶりに 引き込まれ心…

女性失格

『女性失格』/小手鞠るい 本能に従順に生きる一人の女性 好きな男のために体を張り 愛恋に溺れる自分を俯瞰して見る 狡賢く孤癖な女性像として描かれるも 全ての女性が抗うことができない 本性がそこに横たわっている気がしました 本当のことは女性にしか分…

同志少女よ、敵を撃て

『同志少女よ、敵を撃て』/逢坂冬馬 目の前で母、隣人を殺された少女 復讐を生きる道と示され狙撃兵になる 母国ソ連と敵国ドイツ、世界大戦下の激戦 血で血を洗う復讐の連鎖 男たちの理論が蔓延る戦争世界で 女たちは戦争という悪魔の真理を知る 静冷な文体…

黄金旅程

『黄金旅程』/馳星周 ジョッキーを目指した男 夢破れるも競走馬の世界に居座り続ける 男がいる競走馬の産地に住む人々 彼らは人生を夢を競走馬に注ぎ込む 光り輝く馬体、飛ぶように走る馬姿 みなの夢を載せた一頭の馬が馬場を駆け抜ける その勇姿に心が湧き…

生を祝う

『生を祝う』/李琴峰 胎児に出生の意思を確認する未来世界 社会制度と現実の間で葛藤する母親が描かれる 斜め上を行く設定 人間の本質に迫る描写 正直、現実味を帯びない展開に 物語に入り込めないまま終項を迎えてしまう 子は親を選べないとは言うがどうだ…

やめるときも、すこやかなるときも

『やめるときも、すこやかなるときも』/窪美澄 成り行きで一夜を共にした男女 それぞれが心に傷を抱えた二人は 傷の癒しを相手に求める 依存関係を恋と混同した二人 ぎこちない不安定な関係は結末を迎えても どこか心許ない余韻が残された Amazonで読む 書…

パラソルでパラシュート

『パラソルでパラシュート』/一穂ミチ 三十路目前の企業受付の女 偶然に芸人と知り合う 身一つで世間と戦う芸人たちと触れ合い ゆるく生きてきた女の中で変化が起こる 強いメッセージはない ただ生きていく勇気のようなものに じんわりと温かく包まれた気が…

愛じゃないならこれは何

『愛じゃないならこれは何』/斜線堂有紀 ままならないのが恋 そんな恋に翻弄される人々を描いた短編集 人を好きになるということ 好きという感情は同じでも 人によってその形には様々な紋様が刻まれている 思わずツッコミを入れたくなるような カラフルな恋…