ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2020-01-01から1年間の記事一覧

桜のような僕の恋人

『桜のような僕の恋人』/宇山佳佑 病に侵され死にゆく自分の姿を見せたくなくて別れてしまった恋人たちの物語 好きの気持ちが嘘になってしまった二人 愛が未熟なまま病が二人を分かちすれ違う 会いたいのに会えない 相反する気持ちの中で揺れる感情 この物…

ザリガニの鳴くところ

『ザリガニの鳴くところ』/ディーリア・オーエンズ 湿地に住み親に捨てられた孤独な少女の生涯を描いた物語 満ち引きを繰り返す海、鳥たちの羽を煽る潮風、 湿地に生きる動物たちの命の息吹 脳内で鮮明に再現される自然の情景描写に圧倒されました 展開とし…

やがて訪れる春のために

『やがて訪れる春のために』/はらだみずき 祖母と暮らした思い出の家の庭を再生しながら生きる道を見つける女性の物語 祖母の入院をきっかけに 荒れ果てた家と庭を再生していく 再生の過程で繋がる家族と同級生 庭に育つ様々な草花の色彩と匂いが文面から立…

すべてがFになる

『すべてがFになる』/森博嗣 孤島の研究所で殺された天才博士の死の真相をめぐる物語 部屋、建物、島の三重の密室の謎が提示されるミステリー 最初の犯行が明らかになってもなお繰り返される犯行 明かされた事実がさらに混迷の暗闇を深くする 意表を突く常…

でかい月だな

『でかい月だな』/水森サトリ 衝動で動いた友達に怪我をさせられてしまった少年が友情を取り戻そうとする物語 傷つくのを恐れて大切な誰かを傷つけてしまう 青春は意味不明な矛盾に満ちている 友情とはなんなのか、どんな色なのか、匂いは、味は? 答えのな…

ふたりでちょうど200%

『ふたりでちょうど200%』/町屋良平 小学生の時の記憶を共有する二人が社会を風刺する物語 ものすごく速い速度で疾走する物体から送出される 言語のカルマン渦に翻弄されながら 朦朧とする脳で活字を追うも同じ時空には 全くたどり着けそうにない これ…

カラフル

『カラフル』/森絵都 自殺した中学生が死の淵で人生をやり直すチャンスを与えられる物語 人生とは目で見えるものだけで出来ているわけではない 目で見たものの中身が本当は違っていることもある もしあなたが人生に行き詰まったら もう一度あなたの周りをよ…

六月の雪

『六月の雪』/乃南アサ 祖母が怪我で入院したことをきっかけに 祖母が生まれ育った台湾に思い出探しに行く孫娘 旅先で出会ったのは旅を助けれくれる人々とその人生 そして戦争に翻弄された台湾の歴史だった 台湾の文化や日本との関わりなどとても興味深く読…

ぼくは明日 昨日のきみとデートする

『ぼくは明日昨日のきみとデートする』/七月隆文 時間進行が真逆の男女が中間地点の二十歳で恋愛をする物語 不思議な何かに惹かれるように出会ってしまう二人 時を重ねるごとに積み重なる違和感 そこにあるのは濃密でかけがえのない時間でした 切なさと愛お…

何者

『何者』/朝井リョウ 理想と現実に翻弄される就活大学生の本音と建前を描いた物語 就職活動という謎のシステムに否応なく取り込まれ その人生の選別劇場に苦悩する大学生 昨日まで一緒にハジけていた友達は全てライバルと化し そこに人間のダークサイドが浮…

長い終わりが始まる

『長い終わりが始まる』/山崎ナオコーラ ストイックに大学のマンドリンクラブで活動をする女の子の物語 圧倒的な自由の中で人との関係性を手探りする大学生 社会人一歩手前のその世界は喜びと痛みの諸刃である 大学生とはこんなに幼稚だったかと回想するも …

この気持ちもいつか忘れる

『この気持ちもいつか忘れる』/住野よる 高校時代に出会った異世界人との恋が人生の全てだと思い込んだ男子の物語 この世界がつまらないと思っているのに やけに細かいことを観察する矛盾 そこにいたのはとてつもなく面倒くさい人だった でも、その観察の中…

ムゲンのi

『ムゲンのi』/知念実希人 現実の世界で起きた心の痛みと事件を夢の中で解決する物語 壮大な幻想世界の中で展開するミステリー 幾つもの心の異世界ダンジョンを冒険し 事件の真相、夢の世界の謎を解き明かしてゆく ロールプレイングゲームの世界にいるよう…

夜明けのすべて

『夜明けのすべて』/瀬尾まいこ 病気で苦しむ同じ職場の男女が自然にお互いを支える存在になってゆく物語 病気を抱え小さな工場で働くようになった二人 お互いの病気を知りそれぞれの境遇に興味を持つ 自分が病気を抱えながらも人の病気に優しくなれる気持…

ヘディングはおもに頭で

『ヘディングはおもに頭で』/西崎憲 人生の中で苦悩する浪人生の日常を描いた物語 人生という透明な殻の中でもがく青年 日常の中に何気に置かれる他人と友達、そして家族 新しい出会いに心を動かされ、理不尽に怒り、 恋の予感に期待を寄せる 触れられる程…

medium

『medium』/相沢沙呼 警察の捜査に協力し様々な事件の謎解きをする推理小説作家と霊媒師の物語 提示された凶悪殺人事件の真相の謎 心理、物質、現象、時間 全てのアイテムを総動員し謎に挑む そこに超常能力というスパイスが加わり 未経験の推理ミステリー…

卒業タイムリミット

『卒業タイムリミット』/辻堂ゆめ 卒業直前に教師の誘拐事件に巻き込まれた訳あり高校生たちの物語 教師という大人に翻弄される高校生たち 心に傷を負った生徒たちが事件に巻き込まれてゆく 疑惑の矛先は二転三転し 刻々とタイムリミットが迫るミステリー A…

滅びの前のシャングリラ

『滅びの前のシャングリラ』/凪良ゆう 世界の終わりのカウントダウンの中で生きる家族と歌姫の物語 滅びゆく世界の中で 壊れてゆく人間と自分を取り戻す人間 えげつない臨場感で描かれる終末 そこにある小さな希望の光は熱源となる こんな滅亡なら悪くない …

人のセックスを笑うな

『人のセックスを笑うな』/山崎ナオコーラ 既婚の美術の先生と恋に落ちた大学生の切ない物語 どこかの誰かのありふれた恋の物語 不安定な女は大人になっても不安定で 不器用な若い男は恋の幻想に翻弄される 誰にでも経験のある切なく意味不明な恋のファンタ…

しねるくすり

『しねるくすり』/平沼正樹 死と隣り合わせにいる人のために作られたしねるくすりの物語 誰が何のために作ったのか そしてそれは何をもたらすのか 物語はしねるくすりの謎を解き明かしてゆく 最後まで謎を堅持して展開するミステリー 死に対する一つの見解…

自転しながら公転する

『自転しながら公転する』/山本文緒 働く女性のすぐそこにありそうな仕事と家族と恋が描かれている どこまでも低空飛行で勇気や希望が見当たらず ある意味、苦行を楽しむ新種に出会った気分です この共感の自転公転軌道から脱出できるかどうかは あなた次第…

サロメ

『サロメ』/原田マハ イギリスのイラストレーター、オーブリー・ビアズリーと姉メイベルが 芸術界に進出した背景を描いた物語 禁断の戯曲サロメをモチーフに描かれている 芸術界隈で囁かれる色欲と裏切り 物語は戯曲を写鏡に背徳と退廃の世界を描く 扱う内…

風よ あらしよ

『風よ あらしよ』/村山由佳 青鞜の編集者を経てアナキストの妻となる伊藤野枝の生涯を描いた大河小説 人間が生きる意味とは何か この物語は心の底から湧き上がる 魂の叫びを持ってそれを知らしめる 自分が信じるものを決して手放さない 時代は変われど、そ…

白い久遠

『白い久遠』/浅野里沙子 質屋で働く女の子が質入れ品にまつわる人間模様を紐解く物語 物に宿る人間の想いは時に深く果てしない 物語は物に取り憑く人々の想いを紐解いてゆく 物とは人の想い出を記憶する記録装置であり 記憶を引き出すスイッチでもあると思…

去年の雪

『去年の雪』/江國香織 様々な人々の心に留まる日常の出来事を切り取った極短編群集 何気ない日常の中に落ちている 心にチクリと刺さる出来事 無数のエピソードの中に 自分の記憶が容赦なく引き出される 記憶と妄想の海を漂流した気分で読みました Amazonで…

ハリネズミは月を見上げる

『ハリネズミは月を見上げる』/あさのあつこ 女子高生が家族や社会という大人の世界と向き合う物語 高校生が見る大人の世界 それは特別ではなくすぐそこにある現実 やがて全ての子供たちはその世界で生きてゆく 欲や圧力にまみれた世界でどう生きてゆくか?…

星の子

『星の子』/今村夏子 病弱な子供を救おうとして宗教にのめり込んだ親と娘の物語 家族と宗教、そして外の世界 この物語はそこにある現実だけを述べ 読者にそのあり方を問うているのだと思いました 心が求めるものは何か? その選択は個人に委ねられる Amazon…

ダンデライオン

『ダンデライオン』/中田永一 子供と大人の時間が1日だけ入れ替わった男が少女の命を救う物語 交錯する過去と未来 折り返しを過ぎても判然としない行き先 走り始めた物語は急展開を見せ 全てが明らかになる ループする過去と未来につい起点を探してしまう …

落日

『落日』/湊かなえ ある町で起きた殺人事件が小さな町の人々の 隠れた繋がりを明らかにしてゆく 報道や裁判など社会の基幹であるはずの仕組みでは 明らかにされない真実が確実にある この物語はそんな小さな真実に光を当てている Amazonで読む楽天で読む

象牛

『象牛』/石井遊佳 壮大な妄想の海の中にそっと置かれる真実の物語 たどり着くのが難しいが発見された真実はキラリと光る ところどころに仕掛けられる意表を突く比喩は楽しいが 読了する頃にはいささか脳疲労を感じたのは正直な感想 Amazonで読む楽天で読む…