ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

万事快調 オール・グリーンズ

『万事快調 オール・グリーンズ』/波木銅 見えない何かに押し込められ喘ぐ女子高生たち その境界を突き破れるのなら犯罪も正義となる 破滅的に見える剥き出しの咆哮が 息の詰まるようなこの世界の中で きらきら光る宝石のように見えた エグい内容も読後に謎…

旅のない

『旅のない』/上田岳弘 特異な今の時代を特異な視点で描いた短編集 哲学的であるようで哲学ではない 適当であるようで適当ではない 何かあるはずなのに良く分からない 『村上春樹の二番煎じ的な芸風』 なるほど、作中のこの一文がしっくりきた Amazonで読む…

アフター・サイレンス

『アフター・サイレンス』/本多孝好 事件被害者の心のケアをする臨床心理士の女 対象に深く感情移入してしまう性格 自らが加害者家族である心の葛藤 犯罪という狂気が人の心を翻弄する 職業人としてはたぶん失格なのだけど 人間の素が漏れ出す描写にリアリ…

嗤う淑女二人

『嗤う淑女二人』/中山七里 人を殺めることに何の躊躇いもない女二人 犯罪者が持つ特異な匂いが二人を結びつける 淡々と実行されるテロ事件 証拠が残されない現場 前代未聞の被害者数に憔悴する捜査機関 静かにそっと置かれる恐怖に震撼する Amazonで読む楽…

みとりねこ

『みとりねこ』/有川ひろ 猫と暮らす人々を描いた短編集 自由の象徴のように生きる猫たち 一見、ふてぶてしく気ままに生きているようで しっかりと飼い主との絆を掴んで離さない 人の欲目で描かれた物語かもしれない でもそうであって欲しいと願わずにはい…

ばにらさま

『ばにらさま』/山本文緒 きっと人生のどこかでふと思い出してしまう そんなエピソードを綴った短編集 人の人生には完璧はなくて いつもみんなは何かを抱えていて それは面倒で重くて辛いのに 生きることをやめられない でも、最後の最後に笑える時が来ると…

桎梏の雪

『桎梏の雪』/仲村燈 江戸の将棋家に生きる棋士たち 頂点に立つ名人の座をかけて競い合う それぞれの家に継承される棋風 家の隆盛をかけたつばぜり合い 本質を逸脱した世界の末路が 哀愁を纏い痛々しく描かれる Amazonで読む楽天で読む 書籍紹介 著者紹介 p…

川のほとりで羽化するぼくら

『川のほとりで羽化するぼくら』/彩瀬まる 川を異なる世界の境界に見立てた短編集 目の前の景色は本物だろうか? 人はふと疑問を持ち川を超えてみる そこに広がる思いもよらない世界 人生の転換点に踏み込む瞬間 誰にも訪れるその刹那の心の揺動が描かれて…

オーラの発表会

『オーラの発表会』/綿谷りさ 独特な視点と思考を持つ女の子 人が嫌いではないのに人が寄り付かない 一人で平気と強がっていても 気付かぬうちに心に傷を抱えるいじましさ 小憎らしいのに愛おしい 項をめくりながらニヤける流れが止まらない Amazonで読む楽…

とにもかくにもごはん

『とにもかくにもごはん』/小野寺史宣 夫の死をきっかけに始めた子ども食堂 それぞれの事情で参加するボランティアたち それぞれの事情で食堂に来る子供たち そんなワケあり環境が人の心を癒す場となる ほっこり心安らかな時間を過ごせました Amazonで読む…

ふたつのしるし

『ふたつのしるし』/宮下奈都 社会性のない男の子 社会の息苦しさに喘ぐ女の子 異物を排除しようとする社会の中で 二人はひっそりと生きてゆく とても静かな場所でゆっくり拍動する 心音を聞いていたような気がします Amazonで読む楽天で読む amzn_assoc_ad…

カラスの親指

『カラスの親指』/道尾秀介 過去に深い傷を持つ詐欺師の男 犯した罪と復讐の連鎖が男の背中を追いかける 仕掛けられた無数の罠 それが罠であることを匂わせる大胆な手口 一語たりとも見逃してはいけない この物語はそんなことを要求する Amazonで読む楽天で…

星のように離れて雨のように散った

『星のように離れて雨のように散った』/島本理生 過去に傷を持つ二人の男女の恋 それぞれが違和を抱えたまま生き急ごうとする 気付きと混沌の間をひたすら彷徨う物語 薄暗い森に引き込まれ沈鬱するも 気がつけば光の中に立たされ終項を迎えていた Amazonで…

白光

『白光』/朝井まかて 聖像画家、山下りんの評伝が描かれる 西洋画家を目指すも明治の世の混沌に溺れる 出会った師に導かれロシアで聖像画と出会う 勝気で破天荒な性格が余すことなく描かれ その顛末のリアルが人物像を際立たせる 巧みな情景描写に何度も心…

象の皮膚

『象の皮膚』/佐藤厚志 子供の頃からアトピーに悩まされてきた女の子 人の目を避けることは生きるための手段だった 逞しく成長し社会の理不尽に立ち向かうも 長くねじ曲げられた心と傷跡に潜む 狂気のようなものがこんこんと漏れ出していた Amazonで読む楽…