ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

凍りのくじら

『凍りのくじら』/辻村深月 父の失踪という傷を抱えた女の子 自分の性格にコンプレックスを抱えながら 逃げ道のない運命に激しく翻弄される 着地点の予想がつかない中で展開される物語 全編に渡って描写される心の葛藤と痛々しさ ものすごい熱量を感じなが…

犬がいた季節

『犬がいた季節』/伊吹有喜 生徒たちの熱意で学校で飼われることになった捨て犬 犬を世話する生徒たちの青春の一コマが描かれる どのエピソードにも誰もが高校生の時に感じた 逡巡や熱量のようなものが活字から浮き上がり 心に共感と郷愁が訪れる Amazonで…

向田理髪店

『向田理髪店』/奥田英郎 田舎町の理髪店の店主と過疎の町民たちの生活を描いた物語 北海道の田舎町に暮らす人々 全ての出来事が共有される町民文化 喧嘩をしても時間が経てば元通り 濃い人付き合いは深い絆と助け合いを生む 過疎の町の滑稽さと人情が溢れ…

リボンの男

『リボンの男』/山崎ナオコーラ 主夫になり主夫としての生き方に迷う男とその家族の物語 家族を夢見るバイト暮らしの男 理解のある女と出会い主夫となる 男は家事と子育てをしながら 稼ぎのない自分にコンプレックスを抱える 社会や人生は誰かの換金不可な…

ラメルノエリキサ

『ラメルノエリキサ』/渡辺優 やられたらやり返す 幼い頃から復讐に執着する女の子 通り魔事件の被害者となり復讐の炎を燃やす さらりとした文体で描かれる狂気の世界 思春期の不安定な心情が物語を引き立てる 文字が流れるようで気がつくと終項にいました …

雪の練習生

『雪の練習生』/多和田葉子 三代に渡るシロクマの人生の物語 それぞれの生き方は全く異なるが 人間という生き物のエゴが時代背景とともに シロクマたちを翻弄する世界が描かれる シロクマ目線で描かれるどことなく異質な世界観 他では味わえない読書体験で…

報復の密室

『報復の密室』/平野俊彦 大学構内で発生した教授の娘の密室殺人 二年後、新たな密室殺人が発生し深まる謎 被害者の親である教授が突飛な犯人探しを始めるも 登場人物が限られ意外性は限定される ミステリーらしいミステリー作品でした Amazonで読む楽天で…

麦本三歩の好きなもの 第二集

『麦本三歩の好きなもの 第二集』/住野よる 極度の内弁慶である図書館勤務の女子 その傍若無人ぶりは第二集と相成っても健在 俗欲に素直に絡め取られる姿はいっそ清々しい 自己改革や恋の予感もありながら たくましく生きる姿を微笑ましく読みました Amazon…

キッチン

『キッチン』/吉本ばなな 祖母を亡くした女の子が手を差し伸べてくれる誰かに救われ生きてゆく物語 大切な人を亡くした女の子 喪失と悲しみにくれる彼女の側には 心に寄り添ってくれる誰かがいた たとえ辛く悲しいことがあっても 日常を続けた先には必ず光…

薬指の標本

『薬指の標本』/小川洋子 現実から少しだけ離れた世界を描いた短編 人の心の結晶をそっと取り出すような物語 感情を抑え淡々と描かれるも 主人公の想いの強さが行間より滲み出す 人が何かに執着するあられもない瞬間が 赤裸々に書かれていたように思いました…

正欲

『正欲』/朝井リョウ 多様性の許容とマイノリティの現実の矛盾を描いた物語 多様性というキーワードに踊る社会 マイノリティ未満のミクロ圏性癖者の現実 現代社会における両者の矛盾が描かれる 病的な執拗さでそれぞれの齟齬を暴く描写 どこにも救いのない…

きりこについて

『きりこについて』/西加奈子 言葉を話す猫と容姿に恵まれなかった女の子 二人は世の理不尽に翻弄されながらたくましく生きてゆく 人の世の典型例にスポットライトを当て その可笑しみ、理不尽を指摘する 軽い語り口で書かれているので 深読みせずに楽しめ…

塩の街

『塩の街』/有川浩 見たものを塩に変えてしまう病に侵された世界の物語 地上に落ちてきた巨大な塩の結晶塊 人間の体が塩の結晶化する病に侵される世界 シリアスとラブコメが混在する描写 唐突に終焉する物語 物質である塩が人間を追い詰める そこに叫ばれる…