ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2020-08-05から1日間の記事一覧

重力ピエロ

『重力ピエロ』/伊坂幸太郎 母が強姦されて生まれた弟と兄の二人の復讐の物語 アイロニカルな訳アリ兄弟そして父 さらりとした語り口で社会の不条理を私刑にかける いい。好き。 今まであまり意識してこなかった著者が描く世界観 この作品でしっかり認識で…

たそがれどきに見つけたもの

『たそがれどきに見つけたもの』/朝倉かすみ 人生の秋の季節を生きる人々の日常、非日常を集めた短編集 人間を生きることへの葛藤 所詮他人である人との繋がり 歳を重ねたからこそ見える景色 まあいろいろあってもみんなとりあえず生きてるんだよ そんな言…

スプートニクの恋人

『スプートニクの恋人』/村上春樹 エキセントリックな三人の恋の三角関係 初項を開いた途端に村上ワールドの襲撃を受けた 久しぶりに感じるこの感覚 内容に関しての感想は差し控えたい なぜなら考え始めると終わりがないから 考えずに感じる それが村上作品…

オブリヴィオン

『オブリヴィオン』/遠田潤子 妻を殺し刑務所を出所した男が妻の真実を知ってゆく物語 妻を過って殺し服役を終えた男 自分や妻の家族に隠された真実が明らかになってゆく 思いやりの嘘が招く崩壊の世界 Amazonで読む楽天で読む

稚児桜

『稚児桜』/澤田瞳子 能の名曲から書き起こした人間の様々な心根を描いた短編集 恨み、妬み、復讐など人間が引き起こす醜さが描かれているが その文体は穏やかでむしろその余韻に引き込まれる気がしました 今昔、世界の景色は変わっても人の根っこは変わら…

のぼうの城

『のぼうの城』/和田竜 秀吉の北条攻めの際に唯一落城を免れた成田家の忍城の物語 のぼう様とは何者だったのか? 味方や敵の三成はもちろん読者の中にハテナ?を残して物語は幕を閉じる 一つ確かなのはこの戦いが信義を重んじる者たちが戦った戦だったとい…

雲を紡ぐ

『雲を紡ぐ』/伊吹有喜 いじめで引きこもり祖父の元で織物の世界に魅せられ自分の生きる道を見つけた少女の物語 いじめで高校をドロップアウトする女の子 祖父の元で織物の世界と出会い自分の生きる道を模索してゆく 家族という普遍ユニットの不安定さがよ…

ぼくは朝日

『ぼくは朝日』/朝倉かすみ 天真爛漫な小学生の日常と家族を描いた物語 まんまとしてやられました しょっぱなから僕の心は思うがままに操られ笑いと涙が漏れ出す始末 最後は分かるだろみたいな終わり方 全く本の感想になっていませんが 一言言わせていただ…

本日は、お日柄もよく

『本日は、お日柄もよく』/ 原田マハ OLがスピーチライターに転身し政権交代に寄与する物語 軽快なテンポで進む文体とストーリー スピーチと政治の世界が描かれる スピーチはもちろん人が放つ言葉には 世界を動かす力がある、世界を変える力がある 言葉が持…

鹿の王

『鹿の王』/上橋菜穂子 王国同士が争う世界に生きる人々の物語 王国同士そして土着の民の間で繰り広げられる争い 厳しい大自然の中に生きる民衆 物語を読みながら雄大な世界が目の前に広がっているような感覚を覚えた 物語全体を包む優しさのようなものに少…

少年と犬

『少年と犬』/馳星周 飼い主と死別した犬が仲良しの子供を探して旅をする物語 賢く勇気のある主人公 まあ犬なんだけど、こんな犬と出会ってしまったら 目がハートになってしまう気持ちに共感 物を言わない主人公に高倉健の姿を重ねながら 昔飼っていた犬な…

放蕩記

『放蕩記』/村山由佳 母ではなく女として生きる母親に対する屈折を患った女の物語 母親の生き方にわだかまりを持つ娘 よく描かれるテーマの一つです 男の自分でも親の生き方に反発を感じることがあるけど 女性同士にはより深い葛藤と感情の波がある気配を感…

村上海賊の娘

『村上海賊の娘』/和田竜 戦国時代に男勝りに生きる瀬戸内の村上海賊の娘の物語 破天荒で真っ直ぐな女海賊 敵同士でもお互いに対する尊敬の念を忘れない海賊たち 読んでいてとても気持ちがいい 裏表のない生き方をする人たちの眩しい世界を見ました でも本…

雪国

『雪国』/川端康成 温泉地に通う男と芸者の悲哀の物語 女の元に通う男、そんな男を待つ女 人の色恋のカラクリは今も昔も変わらない 日常生活では交わらない二人には 相手のどんな姿が見えているのだろうか? そんなことを考えた 一昔前の風情と情景を感じな…

ジェノサイド

『ジェノサイド』/高野和明 知能レベルの高い新人類の出現によって変化を始める世界の物語 新人類の出現とその存在に脅威を感じる旧人類との攻防 タイムリミットに向けて敵と味方が入り混じりながら進んでゆく脱出劇 ハリウッド映画を見ているような感覚で…

銀花の蔵

『銀花の蔵』/遠田潤子 血の繋がらない父の実家の醤油屋を継ぐ娘の人生を描いた物語 小さな行き違い 些細なことが人間関係に影響を与える世界を見たような気がします 現実の世界も然り 人は全てをさらけ出した時にようやくその人を理解できるのかもしれませ…

昨夜のカレー、明日のパン

『昨夜のカレー、明日のパン』/木皿泉 夫が死んだ嫁と義父の二人暮らしの家の周りの人間物語 嫁と義父、二人の同居暮らし 大切なものを無くした人たちが想い出を抱えながらゆるく繋がって生きてゆく 家族後の新しい世界のようなものの存在を感じました 家族…

舟を編む

『舟を編む』/三浦しをん 国語辞典を製作する編集部員たちの辞書出版に向けた奮闘の物語 辞書編纂という仕事を学ぶ一冊 日常生活で出会う言葉を気の遠くなるような時間をかけて コツコツ収集する地味な作業 その情熱がこの国の言葉の文化を総括する 何かを…

晴れ、時々くらげを呼ぶ

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』/鯨井あめ 世の中の理不尽にくらげを降らせることで抗議しようとする高校生たちの物語 正直このままありきたりの青春小説で終わってしまうのかと 逆にドキドキしていたのだけど 本を読み終えたとき 僕は確かにくらげが降る空の下…

流浪の月

『流浪の月』/凪良ゆう 本人たちの意思で一緒に暮らした青年と幼女が誘拐事件の加害者と被害者として生きてゆく物語 禁断の愛 社会正義との対立 二人だけが知るお互いの本質 読み進めるうちに透明感のある心を持つ二人を応援したくなる 二人を放っておいて…

旅のラゴス

『旅のラゴス』/筒井康隆 異星の知識を得るために旅をし人間という世界を見た男の物語 旅とは日常生活における束の間の異郷体験 人生を旅に例えることもあるけど、この本にはその人生の全てをかけて旅をするというロマンがある イベント的には相当な波乱を…

異邦人

『異邦人』/カミュ フランスに住む世間擦れした青年が殺人を犯し裁判を経て死刑になる物語 思考回路が異なる人とは永遠に噛み合わない世界がよく描かれている 噛み合わない世界は今も昔も変わらない 女子高生とおっさん、政治と民意、立候補者と有権者・・…

ライ麦畑でつかまえて

『ライ麦畑でつかまえて』/J.D.サリンジャー 世の中に絶望した高校生の揺れる心内を描いた物語 大人の一歩手前の少年の繊細な心情に共感 世の中の不条理と戦う少年の心模様がよく描かれていました 本を読みながら僕がライ麦畑で子供たちを捕まえる仕事をや…