ぶっくま

あさのが読んだ本の備忘録

2021-01-01から1年間の記事一覧

カミサマはそういない

『カミサマはそういない』/深緑野分 異世界で起きる不思議な物語の短編集 亡霊の遊園地、地底に住む人々、 陸地を喪失した世界・・・ 異世界では思いも寄らない事象が起きるも その根底に存在する人の心情が物語を彩る Amazonで読む楽天で読む 書籍紹介 pow…

エレジーは流れない

『エレジーは流れない』/三浦しをん 寂れゆく温泉街に暮らす高校生たち それぞれの家庭の事情と 悲哀を感じずにはいられない街並み 将来への漠然とした不安 そんなものが混ぜこぜになった日常が なぜか愛おしくて脳裏にこびりつく Amazonで読む楽天で読む …

ガラスの海を渡る舟

『ガラスの海を渡る舟』/寺地はるな すれ違う家族の中で不仲となった兄妹 祖父のガラス工房を二人が引き継ぐ 仕事を通して人を知り 自らの心を見つめ直す 無くしたものを取り戻すには ただ受け入れるだけでいい そんな簡単なことが難しいのだなと思う Amazo…

万事快調 オール・グリーンズ

『万事快調 オール・グリーンズ』/波木銅 見えない何かに押し込められ喘ぐ女子高生たち その境界を突き破れるのなら犯罪も正義となる 破滅的に見える剥き出しの咆哮が 息の詰まるようなこの世界の中で きらきら光る宝石のように見えた エグい内容も読後に謎…

旅のない

『旅のない』/上田岳弘 特異な今の時代を特異な視点で描いた短編集 哲学的であるようで哲学ではない 適当であるようで適当ではない 何かあるはずなのに良く分からない 『村上春樹の二番煎じ的な芸風』 なるほど、作中のこの一文がしっくりきた Amazonで読む…

アフター・サイレンス

『アフター・サイレンス』/本多孝好 事件被害者の心のケアをする臨床心理士の女 対象に深く感情移入してしまう性格 自らが加害者家族である心の葛藤 犯罪という狂気が人の心を翻弄する 職業人としてはたぶん失格なのだけど 人間の素が漏れ出す描写にリアリ…

嗤う淑女二人

『嗤う淑女二人』/中山七里 人を殺めることに何の躊躇いもない女二人 犯罪者が持つ特異な匂いが二人を結びつける 淡々と実行されるテロ事件 証拠が残されない現場 前代未聞の被害者数に憔悴する捜査機関 静かにそっと置かれる恐怖に震撼する Amazonで読む楽…

みとりねこ

『みとりねこ』/有川ひろ 猫と暮らす人々を描いた短編集 自由の象徴のように生きる猫たち 一見、ふてぶてしく気ままに生きているようで しっかりと飼い主との絆を掴んで離さない 人の欲目で描かれた物語かもしれない でもそうであって欲しいと願わずにはい…

ばにらさま

『ばにらさま』/山本文緒 きっと人生のどこかでふと思い出してしまう そんなエピソードを綴った短編集 人の人生には完璧はなくて いつもみんなは何かを抱えていて それは面倒で重くて辛いのに 生きることをやめられない でも、最後の最後に笑える時が来ると…

桎梏の雪

『桎梏の雪』/仲村燈 江戸の将棋家に生きる棋士たち 頂点に立つ名人の座をかけて競い合う それぞれの家に継承される棋風 家の隆盛をかけたつばぜり合い 本質を逸脱した世界の末路が 哀愁を纏い痛々しく描かれる Amazonで読む楽天で読む 書籍紹介 著者紹介 p…

川のほとりで羽化するぼくら

『川のほとりで羽化するぼくら』/彩瀬まる 川を異なる世界の境界に見立てた短編集 目の前の景色は本物だろうか? 人はふと疑問を持ち川を超えてみる そこに広がる思いもよらない世界 人生の転換点に踏み込む瞬間 誰にも訪れるその刹那の心の揺動が描かれて…

オーラの発表会

『オーラの発表会』/綿谷りさ 独特な視点と思考を持つ女の子 人が嫌いではないのに人が寄り付かない 一人で平気と強がっていても 気付かぬうちに心に傷を抱えるいじましさ 小憎らしいのに愛おしい 項をめくりながらニヤける流れが止まらない Amazonで読む楽…

とにもかくにもごはん

『とにもかくにもごはん』/小野寺史宣 夫の死をきっかけに始めた子ども食堂 それぞれの事情で参加するボランティアたち それぞれの事情で食堂に来る子供たち そんなワケあり環境が人の心を癒す場となる ほっこり心安らかな時間を過ごせました Amazonで読む…

ふたつのしるし

『ふたつのしるし』/宮下奈都 社会性のない男の子 社会の息苦しさに喘ぐ女の子 異物を排除しようとする社会の中で 二人はひっそりと生きてゆく とても静かな場所でゆっくり拍動する 心音を聞いていたような気がします Amazonで読む楽天で読む amzn_assoc_ad…

カラスの親指

『カラスの親指』/道尾秀介 過去に深い傷を持つ詐欺師の男 犯した罪と復讐の連鎖が男の背中を追いかける 仕掛けられた無数の罠 それが罠であることを匂わせる大胆な手口 一語たりとも見逃してはいけない この物語はそんなことを要求する Amazonで読む楽天で…

星のように離れて雨のように散った

『星のように離れて雨のように散った』/島本理生 過去に傷を持つ二人の男女の恋 それぞれが違和を抱えたまま生き急ごうとする 気付きと混沌の間をひたすら彷徨う物語 薄暗い森に引き込まれ沈鬱するも 気がつけば光の中に立たされ終項を迎えていた Amazonで…

白光

『白光』/朝井まかて 聖像画家、山下りんの評伝が描かれる 西洋画家を目指すも明治の世の混沌に溺れる 出会った師に導かれロシアで聖像画と出会う 勝気で破天荒な性格が余すことなく描かれ その顛末のリアルが人物像を際立たせる 巧みな情景描写に何度も心…

象の皮膚

『象の皮膚』/佐藤厚志 子供の頃からアトピーに悩まされてきた女の子 人の目を避けることは生きるための手段だった 逞しく成長し社会の理不尽に立ち向かうも 長くねじ曲げられた心と傷跡に潜む 狂気のようなものがこんこんと漏れ出していた Amazonで読む楽…

にぎやかな落日

『にぎやかな落日』/朝倉かすみ 人生の最後を生きるおばあちゃん 老いてもその人間性は健在だった 褒められると嬉しくなり 好き嫌いで人を区別し サラリと理不尽をやり過ごす 描写が現実すぎて いつの間にかそこに母の姿を見ていた Amazonで読む楽天で読む …

月まで三キロ

『月まで三キロ』/伊与原新 自然の謎を解き明かそうとする科学 全ての根源である科学が人の心を動かす必然 科学に魅せられた人々がその魅力を嬉々として語る姿 その壮大な仕組みに人生を見た人々の姿 物語は科学を通して人の心を証明しようとする 未知を知…

高瀬庄左衛門御留書

『高瀬庄左衛門御留書』/砂原浩太朗 藩の農地を管理する下士の男 息子の死を境に物語が動き出す 独特の言葉使いと折り目正しい文体 それが主人公の男の生真面目な性格と正に一致する どんな波乱が起きてもきっと大丈夫 そんな心持ちのまま終項を迎えました …

水たまりで息をする

『水たまりで息をする』/高瀬隼子 風呂に入らなくなった夫 そんな夫を受け入れようとする妻 社会の歪がもたらした奇異な状況に 焦らず騒がず淡々と対処する女 可笑しみと人間の闇が入り混じる世界の中で 女という生き物の揺るぎない強さを見ました Amazonで…

インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー

『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』/皆川博子 アメリカ独立の戦乱に巻き込まれた人々 戦争という狂気が人々を狂わせ翻弄する 極限の中で結びつく人の心 物語は悲惨な戦争の中で小さく光りを放つ 心を通わせた者たちの姿を浮かび上がらせる 人間の光…

アヤとあや

『アヤとあや』/渡辺優 同じ名を持つ二人の少女たちに漂う危うさ 画家の父、絵のモデルという役割 少女たちにとって特別が何より大切なものだった 小さな出来事に鋭く反応する心理描写 直感的に心に響く言葉たち 危うく儚げな世界観に心を拘束されてしまっ…

仮面

『仮面』/伊岡瞬 障害を乗り越え人気を博すタレント その存在の周辺には不穏な空気が漂う 名声、保身、性癖、きっかけ 抗えない力に背中を押された時 人は一線を超え、仮面をつけた悪魔になる 悍ましい犯罪の中で小さな恋の花が咲く Amazonで読む楽天で読む…

朔が満ちる

『朔が満ちる』/窪美澄 親に酷い仕打ちを受けた子供たち 成長してなお、彼らは悲しい過去に絡まりもがく 世界の全てを疑い、手探りで生きる場所を探す 信頼できるのは同じ境遇の仲間だけだった 彼らにとって救いとは何か? それは安易な施しではないと願う …

ブラザーズ・ブラジャー

『ブラザーズ・ブラジャー』/佐原ひかり 親の再婚で唐突に姉弟になった二人 弟はブラジャーを着ける人だった ぎこちなさの中で探り合い 時に衝突しながら家族になってゆく もどかしく心が揺さぶられ、昂り、気持ちが溢れ出す そこにあるのは紛れもない青春…

アクティベイター

『アクティベイター』/冲方丁 飛来した中国製ステルス爆撃機 羽田に強行着陸した機体から降りた女 彼女は亡命を望んだ 警察、軍、官僚、傭兵、闇組織 それぞれの思惑で動く人間たちの壮絶バトル 息を呑む展開にページを捲るスピードが加速する Amazonで読む…

オーバーヒート

『オーバーヒート』/千葉雅也 哲学を専門とする大学教授でゲイの男 多様性というワードに踊る社会の中で その流れにどこか背を向けたくなる いくら社会が建前で認めようとも 拭いきれないその世界の影と澱 儚さと繊細さが痛々しく描かれる Amazonで読む楽天…

Phantom

『Phantom』/羽田圭介 配当狙いの手堅い株式投資をする彼女 怪しい自己啓発集団に心酔する彼 深みにハマる彼の救出を試みる ありもしない物に縋る人間の愚かに 淡々とした冷徹な視点が斬りかかる 正義という名の危うさを思いました Amazonで読む楽天で読む …